【ウェビナー後記】スタートアップの採用手法は、大企業にも転用できるのか。つまづきポイントを事業部目線から考えてみる
「採用で組織拡大をしたいのに、内定数が足りない。それ以前に応募数が足りない」
採用業務に関わっていると、こんな問題に直面しませんか?
求人広告やエージェント、ダイレクトリクルーティングなど、たくさんの採用経路を確保しているが、応募数が伸びない・・・
そんな状況について、大企業の採用業務に深く関わっている2人が対談形式でウェビナーを行いました。
縄田 昇司
オムロン株式会社 イノベーション推進本部 ビジネスプロデュースセンタ長。人事部門と連携を行いつつ、新規事業組織の採用に関わっている。(以下「オムロン縄田(敬称略)」)
秋山 紘樹
2021年1月に取締役として株式会社ダイレクトソーシングにジョイン。自らも独立し、ベンチャーから上場企業まで幅広く採用領域での支援を行なっている。オムロン株式会社の採用を現在進行形で支援。(以下「DS秋山(敬称略)」)
本記事は、11月18日(金)に弊社主催で行われたウェビナーの書き起こしレポートです。
11月11日(金)に秋山が登壇した「HRカンファレンス2022-秋–」のアフタートークとして開催された本ウェビナーですが、日々採用業務に関わっている方であればどなたでも参考になる内容となっていますので、ぜひご覧ください。
目次
よりよい採用活動のための7つの観点とは?
はじめに、採用活動全体の流れを図にまとめたので、頭出しとして僕の方から最初に軽く解説させてください。
「理想的な採用活動の流れ」としては、スライド上部の「基盤構築パート」を1から順に実行していき、まずは採用活動の基盤固めをします。次に、「実行力向上パート」にある4〜7で、実際の採用業務を行っていくのが最適だと思っています。
その中で、最もよく話題に上がる部分が「5.チャネルマネジメント」。具体的には、ダイレクトリクルーティング/エージェント/求人広告/リファラルなどを指しています。それをサポートするのが「4.武器づくり」で、母集団形成を進める上で必要になる採用ピッチや採用広報のための記事、採用動画の制作などです。
ただ、人事の方からは「とりあえず『4.武器づくり』と『5.チャネルマネジメント』を実行したけど、結局自社の魅力がなんなのかわからない」「ターゲットに一貫性を持った印象づけができていない気がする」というお話をよく聞くため、実際は理想の流れ通りにならないことが多いようです。
こういう場合、さらに上段の「3.採用ブランディング」から考え直すことが必要で、採用ターゲットとなる候補者の解像度を高め、どう思われたいのか、また、どう認識されたいのか、などを言語化する事が必要ですね。
今回は、この採用活動全体の流れを踏まえた上で、候補者側の転職導線を考えていきます。
現代において重要な「カジュアル面談」
これは転職が決まるまでの流れを示した図ですが、ここ数年で転職の流れがこの様に複雑化してきていると思います。縄田さん、この中で特に気になるトピックはありますか?
右上の<探索パート>にある「カジュアル面談」が近頃の採用では非常に重要ですよね。
理由は2つあるんですが、1つは「認知のギャップを埋める役割を持っている」という点です。
「ギャップを埋める役割」ですか?
はい。カジュアル面談を行う時点で「転職者が元々自社に持っている仕事のイメージ」があると思うんですよ。
ただ、そのイメージと「実際にその人にオファーしたい仕事内容」が一致しているとは限らないんですよね。
そこのギャップをカジュアル面談で上手く埋められれば、その後の選考で候補者との認識が乖離してしまう、ということがなくなります。
とても分かります。もう1つの理由はなんでしょう?
もう1つは、カジュアル面談が「自社の魅力付け」をするパートだという点です。カジュアル面談は、まだ転職を考えていない方ともお話出来る場なので、面談後どうやって「この会社なら転職しても良いかも、この会社に入ってみたい」と思ってもらうかが非常に大切です。
いや、本当にそうですよね。この図でもカジュアル面談が「転職を考えるまで」と「転職を考えたあと」どちらにもまたがっているというのを表現したくて、<探索パート>のボックスを微妙な位置に置いているんですけども(笑)
なるほど、なんか絶妙な位置にあるとは思っていました(笑)
まさに先程おっしゃっていた通りで、転職を考える前にカジュアル面談を行うのはここ4~5年くらいでとても一般的になっています。求職者側も本格的に志望動機を用意せずに色んな会社の話を聞きにくるということが非常に多くなってきていますよね。
そうですね。弊社では採用ピッチ資料(カジュアル面談の際に会社のことを魅力的に伝えるための会社説明資料)をつくって、カジュアル面談の進め方をある程度テンプレート化しています。
やはり最近は採用ピッチ資料でカジュアル面談を行っている企業も多いですよね。話せる範囲で構わないんですが、縄田さんは採用ピッチ資料にどういった内容を含めていますか?
最も強く伝えているのは「このポジションが会社の歴史とか今の経営状況の中でどんな立ち位置なのか」ってところですね。もちろん具体的に「こういう領域で〜」「こういう仕事内容で〜」ということも伝えていますが、価値観とか問題意識、ビジョンみたいなところは特に力を入れて伝えている部分ですね。
なるほど・・・その辺りは僕も、いまオムロンさんと一緒にお仕事させてもらう中で感じています。
「オムロン」というブランドのイメージが元々かなり強いのもあって、新規事業を行う際はまた違う景色を伝えなきゃいけないですよね。
まさに先程おっしゃっていた「ギャップを埋める役割」の部分だなと思いました。
少し具体的な話をすると、例えばオムロンの注力事業の一つとしてファクトリーオートメーション(工場の自動化)があるんですが、新規事業創出にチャレンジしている我々の組織オムロンの既存事業と直感的には同じ事業に見えないですよね。
ただ、根っこの部分でオムロンが解決していきたい社会課題は同じなんです。そういう意味では、他のファクトリーオートメーションの会社とは違ったビジョンを持っていると思っていて、それを候補者の方が魅力的に感じてくれるといいなと思っています。
カジュアル面談は営業の商談のようなもの
視聴者の方から質問が来ていますので少し触れてもいいですか?
カジュアル面談を現場社員に依頼する際に、選考ではなくアトラクト(魅力付け)を目的にしてもらうにはどうしたら良いでしょうか?
わたしの場合はカジュアル面談を誰かに依頼することはないですね。カジュアル面談は候補者に会社を魅力的に思ってもらうための商談だと思っていて・・・(笑)営業マンとして一番結果を出せるのは自分だという自負を持たねばならぬと思っているので、カジュアル面談は自分がやらなきゃいけないだろうという意識があります。
なるほど、ではどちらかというと「カジュアル面談を依頼する人に魅力づけの意識をもってもらう」というよりは「魅力付けの意識を持っている人がカジュアル面談を行う」という考え方ですかね。
はい。ただ、選考と魅力付けが混ざってしまうことが時々あります。我々の意識というよりは、候補者側のスタンスが時々選考に寄っている時があるので「いまはカジュアル面談なので、むしろあなたが我々のこと評価する場ですよ」ということを伝えていますね。
「カジュアル面談はあなたのことを評価する場ではないですよ」と伝えるのはとても大事ですよね。
先程カジュアル面談を他者に依頼することはないと聞きましたが、もし仮にいまの選考の数が2倍・3倍になった時、縄田さんだけでは手一杯になってしまうと思うのですが、その場合はどうしますか?
そうですね、もしそうなったら他のメンバーへ依頼することもあり得ると思います。その場合、最初の数回はその方と2人でカジュアル面談を行う場を設けますね。その数回でカジュアル面談における魅力付けのスタンスを知ってもらい、今後カジュアル面談を担当できるメンバーを増やしていくイメージですね。
なるほど。やはりカジュアル面談は魅力的かつ奥が深いですよね。最近だとカジュアル面談のためのサービスも出てきて場としては整ってきた印象があるものの、実際にそれを行う企業側のスキル向上もかなり求められています。しっかりと考えて設計した上で上手く選考の流れに組み込むのが大事なんだなと実感しますね。
エージェント経由でもカジュアル面談は行う?
もう1つ気になった点について伺ってもいいですか?
ダイレクトリクルーティング経由やリファラル(紹介)経由でのカジュアル面談は一般的になってきていると思うんですが、エージェント経由でもカジュアル面談を行っているんですか?
ほとんどのエージェントさんと一緒に行っています。エージェントさんが我々のポジションを訴求する場合にいきなり応募に行くのはハードルが高いので、まずは応募前にカジュアル面談してみませんか?という形で入口をつくっています。
わたしは新卒がインテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)ということもあり、エージェントとして応募受諾を目的にするとかなり厳しい面が多かった記憶があります。そういった際に「応募前に、縄田さんっていう現センター長の方とお話できますよ」という誘い方が出来るのは非常に大きな武器になるだろうなと思いました。
そうですね。入り口さえつくれば、あとはいかにこちらが魅力を伝えられるか、というターンになるのでそこでしっかり魅力付けして正式応募に結びつける、という流れはかなり多いですね。
とはいえあまりにも気軽にカジュアル面談の機会を設けすぎると工数がとんでもないことになりますよね(笑)そこは応募の質と数を鑑みてバランスを取る必要があるなと思いますね。
すぐに応募に至らなくても「お土産」を残してあげる
新たに質問が来ていますね。
せっかくカジュアル面談の話が出たので、すぐ応募にならなかった場合のKeep in Touch(関係維持)パートはどうしているか聞きたいです。
この辺、ダイレクトリクルーティングなどではかなり顕著かなと思います。エージェントさんでも直近転職を考えている人だけでなく半年後・1年後を見据えた関係性づくりを行っている所は増えてきていますよね。そういった場合オムロンさんではどうやって関係維持を行ったり定期的な接触を続けるのか、というポイントは僕も気になります。
ここは正直、本格的に取り組むのはこれからの状況ですね。ただ、カジュアル面談を行った候補者が直近の転職意向を持っていなかったとしても、いまオムロンが中長期的にどういう姿を目指していて、今後どういうポジションが発生しそうなのかなどを伝えますね。この辺は元々のブランディング等も強く関わって来るのかなと思います。会社に対するイメージを明確に持ってもらえれば、候補者の頭の中にお土産としてのイメージを残しやすいですよね。
「候補者の頭の中へのお土産」ってすごい良いキーワードですね・・・!
「今回は受けないけど良い会社だったな」「もし今後転職考えるならここでもいいかもな」って感じていただくのがすごく大事だと思っています。
確かに。「お土産」にも候補者の経歴だったり属性に合わせたレパートリーがいくつかあると良さそうですよね。
そうですね、実際私の頭の中にもいくつかあると思います。
ウェビナーを終えて
色々お話していたらお時間が近づいて来てしまいました。すごく雑な振り方で申し訳ないですが、今日はどうでしたか・・・?(笑)
私も採用にとても詳しいというわけではなく、色々勉強して失敗も繰り返しながらやってる方なんですが、その経験がみなさんのお役に立てたなら幸いです(笑)
今回、実際に縄田さんが取り組まれている具体的な話が伺えてよかったです。本日はありがとうございました。
ありがとうございました!
まとめ
以上、11月18日(金)に開催された「HRカンファレンス2022-秋-アフタートーク」ウェビナーのレポートでした!
弊社では、本記事で触れたような採用関連の業務全般について支援を行っております。
採用ご支援の依頼は以下フォームからお問い合わせください。
また、当日ご登壇いただいた縄田さんの所属するオムロン株式会社にご興味を持った方は以下URLから求人情報をご覧ください。
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安井
飲食系ITベンチャーにてマーケティングを担当後、株式会社ダイレクトソーシングに転職。 カスタマーサクセスとしてコンサルティング業界やエンジニア業界を中心にダイレクトメディアを活用した調査・スカウトを実施。 現在は前職の経験とカスタマーサクセスにて顧客との対面で得た知見・市場感を元に、マーケティング業務全般を担当。
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