戦略ソーサーが読み解くSNSが主戦場となった米国の採用市場と日本への影響
目次
待ちの採用Ver2到来か
2016年、LinkedInの使用が世界的に普及し4億人のユーザーを獲得。ダイレクトソーシングという採用手法がメジャーになるきっかけを与えました。これを契機に米国では、ダイレクトソーシングはもはやあって当たり前の採用文化となりました。日本でも最近はダイレクトソーシングという採用手法が馴染みを持ち始めました。そして2020年、世界的パンデミックの中、両国の採用市場はどのような変貌を遂げたのでしょうか。米国の採用市場の現状を追ってみました。
The recruitment marketing era(リクルートメントマーケティング)の到来
米国では、ダイレクトソーシングによる「攻めの採用」から市場の約90%が「Candidate-Driven」という候補者がポジションを選ぶ時代となり、採用活動にはマーケティングに用いられる戦術や戦略が導入されています。一つ代表的な例を紹介すると、米Uberはハイヤードライバー獲得のため、このリクルートメントマーケティングを運用しています(日本ではUber Eatsへの注目が集められていますが、米国では自動車配車・配車アプリ業としても事業展開しています)。
リクルーティングとリクルートメントマーケティングの線引きとして、そのフェーズに差があります。
リクルーティングにおいては、候補者からの「応募」、「選考」、「内定」の3フェーズで構成されています。一方、リクルートメントマーケティングでは、「気付き」、「検討」、「関心」という候補者への魅力付けに関わる3フェーズで構成されており、この全てのプロセスを「Talent Acquisition」と呼びます。
【図:TalentLyft, “15 New Recruiting Trends You Should Implement in 2020“より】
採用市場の変化により、候補者に対し、企業が選ぶよりも、候補者へ「お客様」に近い感覚をもってアプローチしなくてはならなくなりました。
Talent Acquisitionにおけるトレンド
リクルートメントマーケティングという市場において、マーケティング戦略を軸に、候補者を魅了し続ける作戦、従業員によるブランディング活動(従業員による組織評価)作戦、よりよい候補者体験を組む作戦、タレントプール形成、候補者との関係性のマネジメント、SNSリクルーティングと多様な作戦や手法が展開されています。
こうした採用市場で、実績を上げているのがリファーラル採用とSNS採用です。
最も生産的で効果的な採用内定への最速手法:Employee Referral(リファーラル採用)
Candidate-Drivenとなった市場で即戦力となる候補者の採用活動は、これまで以上に極めて難易度が高く、高価で、時間の掛かるものとなりました。そこで、注目を集めているのが、従業員の有しているネットワークを活用するリファーラル採用です。
単に知人や友人を紹介するという手法ではなく、現職またはアルムナイとしてハンズオンの経験を基に自身のネットワークにいる人物をフィルタリングし、よりカルチャーマッチ度、実務能力のマッチ度の高い候補者と人事を仲介することを目的とします。さらに、リファーラル活動を行うことで、事業やポジションに関する情報のリークをはじめ情報網と採用ポテンシャルのコミュニティを形成することが可能となります。
安く、確実にを担保しているのは、仲介人となる従業員が結果に寄与するのではなく、リファーラル活動に参与することで、報酬(コーヒーのギフト券などちょっぴり嬉しいもの)をもらえる仕組みになっており、継続的な活動展開を可能にしています。
世代の移り変わりに対応:SNS採用
プロフェッショナルソーシャルネットワークサービスといえば、LinkedInとお考えの方も多いかと思いますが、採用市場の変化、候補者の世代交代により、その座に陰りが出てきているのも事実です。これからご紹介する米国でのSNS採用トレンドでは、まさかまさかのメディアが上位を占めます。
米国でSNS採用で最も使われているランキングTop5
※SmartDreamer, “The Top 5 Recruitment Channels in the United States,“ より
第1位:YouTube
米国で最も利用されているSNSで、18-24歳の94%の若手層が利用中(既存社員の面白タッチな動画で採用に繋げているそうです)。
第2位:Facebook
既存の従業員からその友人やフォロワーを繋いでいくと全米の68%の成人が利用中(オーディエンス多さを活用し、求人等のリスティングを行い、コメンターやシェアしてくれる人に反応していき、採用コミュニティ形成しようという作戦が展開されています)。
第3位:Instagram
Z世代(1990年中盤以降に生まれた世代)に最適なプラットフォームでこの世代の71%がInstagramで過ごしており、いま米国で他の世代と混じることのない最大の母数を有しているそうです。新卒やジュニアクラスの採用には最適なメディアとされています。
第4位:Twitter
Y世代(1980年代から1990年代中盤までに生まれた世代)の1/2が使用しているものの、使用人口は右肩下がり気味。しかし、その特性である素早いレスポンスを評価する候補者もいるようです。
第5位:LinkedIn
コーポレートSNSの帝王だけれども、米国内のデモグラフィーの変化により、Z世代、Y世代にはほぼ効果がなく、逆にC-Level(エグゼクティブレベル)、Midキャリアを狙うなら金山とされています。
こうしたメジャーなSNSが採用活動において重要視されるようになったのは、やはりCandidate-Drivenの採用市場の台頭があり、企業情報、採用情報を自社にとって有利に優位に形成する環境に適しているからだと考えられます。
情報のコントロールを検討する
少し採用の話とは離れますが、情報のフローをコントロールするという観点で、米大統領ドナルド・トランプ氏が米国内でTikTokなど中国発のSNSメディアを禁止しようとした試みがありました。この背景に、SNS上での中国によるナラティブ(学術用語では言説、ディスコースと呼んだりもします)コントロールへの対策として、レトリカルなアプローチ(法的には、個人情報流出と訴える他、これを禁止する術がなかった)であったと考えられます。
また、2014年のクリミア半島における、ロシアのハイブリッド戦の一作戦においても、SNS上のナラティブをコントロールし、現地住民による現政権添付を目的に反政府感情を焚き付け、情勢不安を引き起こすことでロシア軍介入の契機を人為的に作り出した事例があります。
Candidate-Drivenの待ちの採用という市場に戻ったかのようにも感じられますが、本質的にはSNS上の心理戦、つまり、ヒューマンドメインを対象としたナラティブコントロールで候補者に選んでもらえる、言わば自社にとって有利な作戦環境を創意していく時代に突入したのです。SNSは単なる娯楽ではなく、安全保障でも採用現場でも「主戦場」と化したのです。
日本の採用現場を考える・考えられる企業
SNS採用どころか、ダイレクトソーシングにもまだまだ抵抗がある日本では、米国の現状とはあまりに乖離があり、受け入れがたいものかもしれません。また、SNSなんてお遊びスペースで採用とは正気の沙汰なのかと問われても不思議ではありません。
こうした、人事・採用における新領域に株式会社ダイレクトソーシングでは切り込んでいきます。既存の固定概念に囚われず、様々な可能性を模索し、必要とされる調査、研究、分析を行い、ビジネスやソーシング実務に反映しています。また、先のナラティブコントロールに関わる情報網の形成に関しても、弊社ブランディングサービスの一部として研究開発が進められています。
このような、未開の領域、チャレンジングな課題に対して、弊社では複合的知識、経験を持って取り組む環境があります。また、ソーシングの担い手であるソーサーは、単なるリクルーティングの担い手としてだけでなく、その実務を優位に進めるためのデータ収集、研究、分析やサービス開発にも従事しています。
世界で様々な事情があるなかで、日本におけるベストプラクティスが何かを一緒にソーシングしませんか。まずは、カジュアルにお話できればと思います。
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【Application】
カスタマーサクセス
コーポレート系
フロントエンドエンジニア
【参考文献リスト】
Alexandra at harver, “11 Top Recruiting Trends To Watch Out For 2020,“ harver, January, 2020.
Anja Zojceska, ”15 New Recruiting Trends You Should Implement in 2020,” TalentLyft, September, 2018.
Biddyco, “Beyond Job Boards: How to Copy Uber’s Recruiting Strategy in Your Hiring,“ Biddyco, date-unavailable.
Guest Author at TalentLyft, “Which Marketing Channel is Best for Recruitment in 2020?,” TalentLyft, September, 2019.
Guest Author at TalentLyft, “6 Tips for an Effective Employee Referral Campaign,“ TalentLyft, October, 2019
Monica at harver, “6 Best Innovative Recruitment Marketing Strategies,“ harver, May, 2019
recruitics, “What People Are Saying: Uber,“ recruitics, date-unavailable.
SmertDeamers, “The Top 5 Recruitment Channels in the United States,“ SmertDreamers, date-unavailable.
TalentLyft, “What is Employee Referral?,“ TalentLyft, date-unavailable.
Jobvite, “RECRUITING BENCHMARK REPORT Fuel Optimization Efforts with Exclusive Industry Data 2019,” Jobvite, March 2019.
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開催しています
竹村 朋晃
株式会社ダイレクトソーシング CEO (プロフィールはこちらをクリック) 2005年に野村総合研究所に入社。損害保険システムの構築に従事。2015年11月より株式会社ダイレクトソーシングを立ち上げ。エンジニア経験者中心にデータドリブンリクルーティングを中心としたサービスを展開。
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