採用ノウハウ
2024.08.28

新卒の採用基準とは?決め方や重視すべき基準の具体例を紹介

新卒の採用基準とは、企業が新卒採用を行う際に候補者の採否を判断するために設ける基準のことです。
例えば、コミュニケーション能力、問題解決能力、主体性などが挙げられます。

ただ一方で、「新卒の採用基準をどう決めるべきか分からない」「具体的にどのような採用基準を設定すべきかを知りたい」と考える方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、新卒採用について基本的な情報を示した上で、決め方や重視すべき基準、設定時の重要ポイントを紹介します。

新卒の採用基準とは

新卒の採用基準とは、企業が新卒採用を行う際に候補者の採否を判断するために設ける基準のことです。
採用要件と呼ばれることもあります。
具体的には、コミュニケーション能力、自己学習能力、問題解決能力、主体性など業務において必要とされる能力や志向性などの有無や高低を基準として設定します。

採用基準を設定することで、採用プロセスの書類選考や面談などにおいて、客観的かつ統一性をもった判断が可能となります。

中途の採用基準との違い

新卒と中途の採用基準の違いは、以下の通りです。

評価項目
新卒の採用基準
中途の採用基準
学歴・学問の成績
重視される
あまり重視されない
ポテンシャル
重視される
あまり重視されない
即戦力
あまり重視されない
重視
職務経験
あまり重視されない
(インターンシップやアルバイトの経験などがあれば加点)
重視される
(募集ポジションとの適合性)
専門知識・スキル
あまり重視されない
(研究職などは例外)
重視される
過去の実績
重視されない
重視される
理念への共感
重視される
新卒ほどは重視されない

総じて、新卒採用では主に高いポテンシャルを有していること、中途採用では主に即戦力であることが重視されます。

新卒の採用基準の決め方

新卒の採用基準の決め方を、5ステップで紹介します。

ステップ1.役員クラスに採用基準の「決め方」に対する同意を得ておく

自社の将来を担う新卒人材の採用基準は、トップダウンで決めるべきだと考えるトップ層(役員クラス)も少なくありません。
そのため、まずは以降の「ステップ2〜ステップ4」の流れで決定することに対して、同意を得ておくことが大切です。
その際に、欠かせない採用基準の有無を事前に確認しておきます。

こうしたプロセスにより、以降のステップでスムーズな進行が可能となり、最後に覆されるようなこともありません。

ステップ2.現場で活躍する社員から採用基準の候補を抽出する

新卒で入社して数年後に「どのような活躍をしてほしいか」という基準で考え、それを体現できている社員を選抜します。
新入社員の配属予定先の部署で明確な成果・業績をあげている社員を選ぶのが一般的です。
そして選抜された活躍社員が有している要素を、当人の上司や周囲の現場社員からヒアリングの上、特定していきます。

例えば、当人の上司から「端的な指示を出せば自らで段取りを組み、分からないことが発生すれば直ぐに確認を取り、どんどん推進してくれる」といった内容をヒアリングできれば、「主体性」「コミュニケーション能力」といった要素を抽出でき、採用基準の候補となるのです。

なお、抽出元となる活躍社員は1人に絞る必要はなく「複数名の活躍社員に共通する要素」を抽出するのもおすすめです。
もし、配属先が不明確な場合は、部署を問わず新卒社員として入社後、早い時期から活躍できている社員および現場で高い評価を得ている社員を選抜するのが良いでしょう。

ステップ3.基準を選定して重視レベルを決定する

ステップ2で複数抽出した各採用基準を、自社の理念やビジョンとの適合性、より満たして欲しい要素などを考慮して選定し、下記の「採用基準の重視レベル」まで決定しましょう。

【採用基準の重視レベル】

  • MUST(必須基準)
  • 必ず満たすべき基準(満たさなければ不採用とする要素)

  • WANT(歓迎基準)
  • 満たしていれば加点する基準(満たすのが望ましいが、入社後の教育や経験で補える要素など)

  • NEGATIVE(不要基準/不採用基準)
  • 満たしていても加点しない要素、もしくは満たしたら不採用とする要素

ステップ4.採用基準を根拠と共に役員クラスへ共有して同意を得る

選定した採用基準を根拠と共に役員クラスへ共有し、最終的な同意を得ます。
具体的には、基準を選定した理由やその根拠を詳細に説明し、役員からの質問や懸念に対処します。

また、ここで役員からのフィードバックを取り入れることで、基準の精度向上にもつながります。
こうしたプロセスにより、自社の採用基準が確固たるものとなり、全社的な合意を形成できるのです。

ステップ5.採用基準をより具体的な評価項目に落とし込む

最後に、設定した採用基準をより具体的な評価項目に落とし込みましょう。
本ステップは、面接など実際の選考場面で、採用基準を満たしているかを判断するために行います。

具体的には、基準ごとに評価項目を詳細に設定し、面接用の質問や評価シートを作成します。
例えば、「リーダーシップ」を基準に設定した場合、その評価項目として「過去のリーダーシップ経験」「チーム内での役割」「リーダーシップの取り方」などを具体的に挙げます。
このように具体化することで、選考プロセスが一貫性を持ち、公平かつ効率的に行われるようになるのです。

新卒で重視すべき採用基準の具体例


新卒で重視すべき採用基準の具体例を、3つ紹介します。

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力とは、口頭および書面で効果的に情報を伝達し、他者と協力して仕事を進める能力と定義できます。
単に話すのが上手いなどではなく、成果につながるコミュニケーションをとれるかが求められます。

職場での円滑なコミュニケーションは、業務効率はもちろん、部署・チーム内での連携や成果に直結するため、新卒採用においても重視すべき基準のひとつです。

具体的には、面接での受け答えの明確さや論理性、グループディスカッションでの意見交換のスムーズさなどが評価対象となります。

また、アルバイト経験やサークル活動などを通じて得た対人スキルも重要です。
高いコミュニケーション能力を持つ新卒社員は、組織の一員として早期に活躍できる可能性が高いでしょう。

自己学習能力

自己学習能力とは、業務遂行に求められる知識やスキルを自ら率先して習得し、成長する力を指します。
変化の激しい現代のビジネス環境において求められるスキルであり、早期に成長して活躍を果たすためには、重視すべき採用基準といえます。

具体的には、新しい知識やスキルを積極的に学ぶ姿勢、自己啓発に取り組む意欲などを評価します。
面接では、これまでの学業への取り組み方、自主的に学習した経験の有無と結果などを具体的に尋ねることで、この能力の有無を測ることが可能です。

課題解決能力

課題解決能力とは、困難に直面した際に効果的な解決策を見つけて実行する力のことです。
単純な課題であれば即判断して解決策を見出すことができ、複雑な課題であっても個々の要素に分けて冷静にひとつずつ着実に解消できる能力と定義できます。

候補者が課題に対してどのように対処するのかを見極めるために、過去の経験や具体的な事例を通じて評価します。
具体的には、困難な状況に直面した際の対応方法や、チーム内で課題解決に貢献した経験などを尋ねましょう。

また、グループワークやケーススタディを用いて、課題解決能力をその場で確認することも有効です。

主体性

主体性とは、自らで考えた上で判断・行動する姿勢を指します。
いわゆる「指示待ち社員」になることなく、自発的に仕事に取り組み、責任を持って行動できるかどうかは、新卒採用においても重視すべき基準です。

例えば、アルバイト経験があるなら指示を受けた後の業務への取り組み方、所属研究室やサークル内で協力して取り組むべきことがあった際の立ち回り方などから評価できます。

誠実性

誠実性とは、他者に対して正直かつ信頼できる行動を取る姿勢を指します。
昨今は特にコンプライアンスが求められる傾向があるため、誠実性は重視すべき採用基準といえるでしょう。

面接では、誠実性を問われるような場面を想定して、その際いかに行動するかを確認することで見極めることが可能です。

その他にも「これまでに失敗した経験について教えてください」とあえて抽象度の高い質問を投げかけるのも有効です。
この問いに対して、失敗について取り繕うことなく正直に答え、その出来事に関する自らの非を受け入れて改善につなげているかを確認します。

チャレンジ精神

チャレンジ精神とは、未知の領域に対しても果敢に挑戦できる姿勢を指します。
チャレンジ精神を重視する企業は多く、予測困難な現代社会において勇気をもって挑戦できる姿勢を求められているのです。

例えば、学生時代に何かに挑戦した経験、新たなスキルや資格の取得に取り組んだ経験などを、具体的なエピソードとその結果について尋ねることで評価します。

ストレス耐性

ストレス耐性とは、プレッシャーや困難な状況に対する適応力を指します。
業務に携わる上では、人間関係における摩擦、トラブルへの対応、未知の領域への挑戦など一定のストレスを避けることはできません。
そのため、ストレス耐性も重視すべき採用基準といえるでしょう。

例えば、これまでに経験した困難な状況やプレッシャーのかかる状況下で、具体的にどのように考え、いかに対応したかを尋ねます。
また、蓄積されたストレスを解消する方法を有しているかを確認することも有効です。

理念やビジョンに対する共感度

自社の企業の理念やビジョンに対する理解と賛同の度合いは、新卒採用において重視する企業の多い採用基準です。
自社の方向性や価値観に共感し、一緒に成長していけるかを示しています。

理念やビジョンに対する共感度は、自社に対するエンゲージメントやモチベーションに対して長期的な影響を及ぼします。

面接で、企業の理念やビジョンについてどう感じているか、どのように共感しているかを、率直に尋ねてみましょう。
ここでの回答の明確さや具体性から本当に共感しているか否かを判断可能です。

新卒の採用基準を設定する際の重要ポイント


新卒の採用基準を設定する際の重要ポイントを、4つ紹介します。

役員クラスと現場の両方から同意を得る

先述した「新卒の採用基準の決め方」においても触れましたが、役員クラスと現場の両方から同意を得ることが重要です。

仮に役員クラスからの同意しか得ていなければ、配属先の現場社員から「求められる能力や特性を持っていない」「育成しにくい」といった不満が生じかねません。

反対にもし現場の同意しか得ていなければ、役員クラスは「自社の長期的な経営計画にそぐわない人材が採用された」「理念との適合性が低く自社が大切にする価値観が失われかねない」といった指摘が生じる可能性があるでしょう。

役員クラスは戦略的な視点から、一方で現場は具体的な業務の視点から採用基準を評価できます。
両サイドからの意見を調和させてこそ、より自社の持続的な発展に貢献できる人材の採用を実現できるのです。

就職差別をしないように注意する

新卒の採用基準を設定する際には、無意識のうちに「就職差別」をしないように注意しなければなりません。

厚生労働省は「公正な採用選考の基本」において、適性や能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり、面接で尋ねたりするなどによって把握することは、就職差別につながるおそれがあると指摘しています。

適性や能力に関係がない事項とは、以下の通りです。

■本人に責任のない事項

  • 本籍・出生地
  • 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
  • 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)
  • 生活環境・家庭環境など

■本来自由であるべき事項

  • 宗教
  • 支持政党
  • 人生観、生活信条
  • 尊敬する人物
  • 思想
  • 労働組合・学生運動などの社会運動
  • 購読新聞・雑誌・愛読書

参考:公正な採用選考の基本|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

客観的に評価可能な基準にする

できる限り客観的に評価可能な採用基準にしましょう。
複数の候補者を比較して、どちらがより自社に適しているかを判断する上で重要となるためです。

例えば、主体性やリーダーシップなどは、重視したい採用基準である一方で、客観的な判断が難しい要素でもあります。
そのため、「面接では具体的なエピソードを尋ねることで、客観性を担保する」「数値化・比較を行いやすい診断テストや分析ツールを用いる」といった選考手段の工夫が求められます。

決定後は面接官など採用関係者に共有する

採用基準が決定した後は、面接官はもちろん、説明会を支援する社員や座談会で質疑応答を担当する社員なども含めて、採用活動に関係する全社員に共有することが重要です。
これにより、採用プロセス内で多角的かつ一貫した評価が行えるようになり、より自社に適した人材の採用を実現しやすくなります。

まとめ

新卒の採用基準とは、企業が新卒採用を行う際に候補者の採否を判断するために設ける基準のことです。
採用要件と呼ばれることもあります。

新卒と中途の採用基準の主な違いは、新卒採用では高いポテンシャルが重視されるのに対して、中途採用では即戦力であることが求められる点です。

採用基準の決め方を5ステップで紹介しました。
とりわけ、役員クラスと現場の両サイドからの同意を得ておくこと、就職差別につながるような採用基準は設けないことには注意しましょう。
新卒で重視すべき採用基準も8項目ほど紹介していますので、あわせて参考にしてください。

また、弊社はダイレクトリクルーティング支援専門企業として、過去70万件・全40媒体以上のソーシングデータを用いて、自社が求める人材の採用を最短ルートで成功に導くサポートを行っています。

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竹村 朋晃

竹村 朋晃

株式会社ダイレクトソーシング CEO (プロフィールはこちらをクリック) 2005年に野村総合研究所に入社。損害保険システムの構築に従事。2015年11月より株式会社ダイレクトソーシングを立ち上げ。エンジニア経験者中心にデータドリブンリクルーティングを中心としたサービスを展開。

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