海外の採用事情
2023.08.09

アメリカの採用事情を解説します

アメリカの採用事情ってどうなっているのでしょうか?

海外ではどのような採用活動や就職・転職活動が行われているか、人事・採用担当者だと気になる方も多いと思います。
特に海外に支社がある企業や海外から人材を獲得したい企業は気になるでしょう。
しかし海外の採用事業はその国や地域によって様々。
その国に留学していた、その国で働いていた、その国で働きたいと思っていた、などの状況にある人でなければ、なかなか採用事情を把握しているという方は少ないのではないでしょうか。
そこで何回かに分けて、海外の採用事情について調べた結果をご紹介する記事をお届けしたいと思います。
今回はアメリカの採用事情についてです。




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1.アメリカでは採用時に何をみている?

アメリカでは採用時に人の何をみているのでしょうか。
日本の採用では、適性検査の結果や面接での受け答えなどから想像できる人柄を見たり、転職回数が多い人はジョブホッパーと言われて敬遠されたりする傾向があります。
日本とアメリカではどのように違うのでしょうか。

1.1.キャリア

まずアメリカの採用で企業が見ているのは候補者のキャリアです。
どの大学で何を勉強してきたのか、転職者ならどのような企業で何をしてきたのかが問われます。
日本では文系学部出身の人材がIT企業でプログラマになることもあれば、理系学部出身者が銀行に勤めることもあります。
また、入試の際の偏差値で付けられる大学のランクに関係なく、同じ会社に様々な大学出身の社員が集まります(もちろん例外もありますが)。
しかしアメリカではそのようなことは基本的にありません。
大学で学んだことをもとに働くことが前提ですので、アメリカの若者にとってどの大学のどの学部学科に入るのか、どの研究室に所属するのかは重要な項目です。
有名大学出身であること、就職先の事業と関連のある学部学科で研究していたことがより求められます。
そして大学に入る際は試験の結果だけでなく、スポーツや音楽などの実績やボランティア活動の経験などが考慮され、ネームバリューのある大学ほどその点も重視されます。
「日本の大学は入るのは難しいが卒業するのは簡単、アメリカの大学は入るのは簡単だが卒業するのが難しい」と比較する言葉があります。
就職後に通用するよう、大学在学中に猛勉強することが求められるわけですね。

1.2.スキル、即戦力

企業が見ているのはキャリアだけではありません。
スキル、即戦力が必要です。
そのためには大学で実践に使える知識を身につけるだけでなく、インターンシップによる実務経験が求められます。
アメリカを舞台にしたドラマや映画を見ていると、インターンとして企業で働く人が登場することがありますよね。
彼らは大学在学中である場合もあれば、休学している場合やすでに卒業している場合もあり、「インターン生=大学生」というイメージの多い日本とは事情が異なるのです。
日本のインターンシップでは、「大学生にちょっと仕事を経験してもらって会社に興味をもってもらおう、優秀な学生なら採用前に声を掛けておこう」という側面が強く、インターンを経験したからといって学生に即戦力がつくわけではありません。
一方、アメリカでは採用の条件に数年以上の実務経験を求められるため、採用後に発揮できる即戦力を身につけるため、インターンを経験するのです。
就職活動では、求職者はいかに自分に即戦力があるのか、入社後に結果を出すことができるのかを説明しなければならないのです。

1.3.奨学金取得の有無

奨学金というと、日本では学費の捻出が苦しいために取得するもの、というイメージが強いかもしれません。
しかしアメリカでは「奨学金を取得している=取得できるくらい優れた人物」というように捉えます。
学業やスポーツ、文化活動などで結果を出さなければ奨学金の取得が難しいのです。
奨学金を受け取っていれば受け取っているほど、それだけ優秀な人材であるとみなされます。

1.4.転職回数

日本では転職回数が多いとジョブホッパーと言われ、採用してもすぐに辞めてしまうのではないかと敬遠されやすい傾向にあります。
しかしアメリカの採用では違います。
終身雇用や定年がないため、転職を繰り返すことでキャリアアップを繰り返し、スキルや経験、待遇を改善していく傾向にあります。
ヘッドハンターも多く、スカウトされて転職することが日本よりも当たり前となっています。
むしろ勤続経験社数が少ない人材はどこからも必要とされていない能力の低い人材だと思われてしまいます。

2.アメリカの採用活動の特徴

アメリカでは以上のような点を採用の際に企業が見ています。
では採用活動の形にはどのような特徴があるのでしょうか。

2.1.通年採用

まず新卒一括採用ではなく、通年採用を行っている点がアメリカの採用活動の特徴です。
日本では昔から新卒採用で大量に採用し、終身雇用で定年まで働いてもらう形が一般的でした。
そのため毎年退職者が一定数生じるため、新卒を一括採用して増減を調整するのです。
一方、アメリカでは先ほどご紹介したように転職して当たり前の社会です。
いつ、どのタイミングで優秀な人材が転職市場に出てくるかわかりません。
そのときに採用の窓口が閉じてしまっていては、絶対に自社に入ってくれることはありませんので、常に対応できる状態にしておかなくてはいけないのです。
さらにいつ誰が辞めるかわからずポストに空きが出たら採用する、としているため、自ずと通年採用になるのです。

2.2.ポジション別採用

日本では総合職採用をしている会社が多いですよね。
そのため、どこの支社、どこの部署、どの職種で働くかは分かりません。
異動になることもあるので、入社から退社まで多くの職種や部署を経験する場合もあります。
また、ある部署で働いていたものの適応できずに良い結果を出せない人材がいた場合、企業はその人材に合う部署に異動させることで、社員が力を発揮できないという状況を打開することができます。
一方アメリカでは総合職採用という形ではなく、ポジション別採用という形が基本です。
そのため、例えば事務職で採用された人材が営業職に異動になることはありません。
採用されたときに取り決めた業務範囲から外れる業務には従事しません。
実際に面接をするのも、人事部の人間ではなく、その採用対象の部署のマネージャーが行うことが一般的です。
雇用される側としては不本意な異動がないのは喜ばしいことですが、そのかわりそのポジションにふさわしい人物が他にいれば席を奪われ、会社に残る場所がないためにすぐに解雇となってしまうリスクがあります。

2.3.オンライン応募が多い

日本ではいまだに紙の履歴書に手書きで記載し、実際に候補者が会社を訪れて面接するというオフラインでの採用活動、就職・転職活動が大半をしめています。
しかしアメリカではオンライン応募やオンライン上での面接が一般的です。
これは日本とは違い、アメリカの国土が広く、オンライン上でやり取りしたほうが理にかなっているからです。
日本は全国で同じ1つのタイムゾーンを共有して生活していますが、アメリカでは西海岸と東海岸で3時間の時差があり、全部で4つのタイムゾーンに分かれています。
西海岸と東海岸を行き来するには、車や電車での移動は非常に時間が掛かりますので、移動はもっぱら飛行機です。
採用されるかも分からない企業の面接のために、毎回飛行機を使っていては候補者はすぐに金欠に陥ってしまうでしょう。
企業としてもお金をかけてオフィスに来てもらったのに不採用となれば、会社のイメージが悪くなってしまいます。
履歴書送付やエントリーはweb上にアップロードしたりメールで送ったりして、面接は電話やSkypeのようなチャットツールを使用しています。

3.アメリカの採用活動でメジャーなLinkedIn(リンクトイン)

アメリカの採用活動の特徴についてご紹介しました。
日本と比較していかがでしょうか。
国が違えば採用の形も違うということですね。
しかし日本でも最近、アメリカのようにインターンシップが学生の間に浸透し始め、転職して当たり前の時代と言われ始め、通年採用やオンラインを活用した採用活動を始める企業が現れはじめました。
アメリカで普通に利用されているサービスやツールが、何年か遅れて日本でも利用されるということはよく起こります。
採用の現場でも同じことが起こっており、最近日本でも採用に使われ始めているのが「LinkedIn(リンクトイン)」です。
LinkedIn(リンクトイン)はアメリカ発祥のSNSで、ビジネス向けSNSです。
Facebookのように人とつながり、情報共有やメッセージのやり取りが可能ですが、友人とプライベートのことを共有するFacebookとは異なり、仕事関連の相手とビジネス上のつながりを構築するSNSです。
ビジネスSNSですので、採用・転職向けの機能があります。
LinkedIn(リンクトイン)に求人を掲載したり、登録ユーザーの中から条件にあう人材を探してダイレクトメッセージを送ったりが可能です。
アメリカではこのLinkedIn(リンクトイン)を使った採用、転職が一般的になっています。
アメリカのLinkedIn(リンクトイン)ユーザー数は1億5,400超で、アメリカの人口が3億2,700人ぐらいであることを踏まえると、LinkedIn(リンクトイン)がいかにアメリカで普及しているかがお分かりいただけるのではないでしょうか。
一方日本では現在200万人超のユーザーがいます。
アメリカに比べればまだまだですが、最近LinkedIn社が日本でのユーザー獲得に大きく動いており、ユーザーをどんどん伸ばしています。
つまり海外の採用手法や新しいサービスに興味のある企業が積極的に利用している段階と言えます。
LinkedIn(リンクトイン)を使って採用・就活するメリットには以下が例として挙げられます。
▼LinkedIn(リンクトイン)を使って採用する側のメリット

  • 日本の一般的な求人媒体と比較して、費用対効果が高い
  • 条件を細かく指定して人材を探せる
  • ダイレクトメッセージでスカウトができる
  • 候補者のビジネススキルやキャリアを簡単に確認できる

 
▼LinkedIn(リンクトイン)で就職活動をするメリット

  • 待っているだけでスカウトが届く
  • キャリアやスキルをアピールしやすい
  • 企業の接触手段が1つ増える

アメリカの採用活動の特徴でもお伝えした通り、アメリカの採用・就活は合理的な方法で進められます。
LinkedIn(リンクトイン)もまた、企業にとっても求職者にとっても合理的に採用・就活ができる点が評価されているからこそ、ここまで浸透しているのだと考えられます。
採用活動にしろ営業活動にしろ、日本でも同様に合理性を重視するようになってきています。
今後採用活動の一手段として、LinkedIn(リンクトイン)がますます浸透していくのではないかと思います。
もし採用活動をよりよくしたいと考えている人事・採用担当者の方がこの記事を読んでいるのでしたら、「使って当たり前」の段階になる前からLinkedIn(リンクトイン)を活用することをおすすめします。
他社よりも先に挑戦し、差をつけましょう。

4.アメリカの採用で真似できる部分は真似しよう!

何でもかんでもアメリカの真似をするのはいかがなものかと思いますが、明らかに良い点があれば真似していくべきでしょう。
ある国によってはうまくいく方法でも、他の国では通用しないことももちろんあると思います。
しかし試す前にどうせうまく行かないと諦めるのではなく、一度試してみて、結果をみてみるべきです。
今回はアメリカの採用についてご紹介しました。
次回は他の国・地域の採用についてお届けしたいと思います。




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竹村 朋晃

竹村 朋晃

株式会社ダイレクトソーシング CEO (プロフィールはこちらをクリック) 2005年に野村総合研究所に入社。損害保険システムの構築に従事。2015年11月より株式会社ダイレクトソーシングを立ち上げ。エンジニア経験者中心にデータドリブンリクルーティングを中心としたサービスを展開。