エンジニア採用
2023.05.25

ホテル業界のシステムとエンジニア採用について

ホテル業界のシステムとは

引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000136.000022951.html

 

ホテル業界では、上図のように多種多様なITサービスが存在します。
宿泊予約サイトや、自動精算機、VOD(ビデオオンデマンド)等は宿泊者側としても目にする機会も多く、馴染みがあるかと思います。
その他にも、売上・稼働率を算出する分析ツールなど多様なシステムが存在し、ホテル運営を支えています。
今回はその中でも、予約〜チェックインまでの流れに関わるシステムにフォーカスしてみたいと思います。

予約〜チェックイン時に機能するシステム

まず、予約〜チェックインまでには、基本的に4つのシステムが介在し、以下のような流れでそれぞれが連動しています。

宿泊予約サイト(じゃらんや楽天トラベル等)から対象ホテルへ予約を行う
-顧客情報や宿泊日のデータが、各サイトごとの形式で登録され、サイトコントローラーへ送信

サイトコントローラー(ねっぱんや手間いらず、リンカーン等)へ予約情報が入る
-各サイトから受信したデータを一意の形式に統一しホテルシステムへ送信

店舗が運用するホテルシステム(PMS)へ予約が入る
-受信した予約データを確認し、ホテルスタッフが手入力で空き部屋へアサインする

④宿泊客がフロントに到着した際、チェックイン処理を行う(自動精算機)
-鍵の手配・支払処理をチェックイン時に行うが、自動精算機を導入している場合は一括で処理が可能になります。(支払い/客室ICカードキー発行/ポイント付与等々)

インターネットサイトで予約を行う場合、予約受付されたデータは一度サイトコントローラを通して、ホテルシステムに送信されることが一般的です。
サイトコントローラを介する理由は大きく分けて2つあり、1つ目は各予約サイトの様々な形式の予約データを一元化し、ホテルシステム側が予約データを受け取りやすくすること、
2つ目は空室状況を各予約サイトに同時に共有させ機会損失を防ぐことにあります。
ただ、最終的にはホテルシステムで受信した予約データをスタッフが参照し、手動で部屋を割り当てることも多いので、空席状況と実状況のタイムラグから、どうしてもオーバーブッキングが発生するケースもあります。
当日チェックインしたら、予約した部屋よりもグレードの高い部屋に案内された!というご経験がある方もいらっしゃるかと思います。
そこを紐解くと、上記のようなシステム上の都合が見えてくるという訳です。もちろん、ヒューマンエラー的に起因していることもあります。

次に、上記の③と④のフェーズで関わった、ホテルシステム(PMS)と自動精算機にフォーカスし、業界の現状とソーシングについて紹介していきたいと思います。

ホテルシステム(PMS)とは

ホテルシステムとは、ホテル・旅館の予約や客室管理、売上管理、チェックイン処理等の機能を有するシステムを指し、PMS (Property Management System)と総称されます。
ホテルのフロントスタッフがチェックイン対応時に操作しているものは総じてPMSで、自動精算機や電子決済端末、サイン用タブレットなど様々なIoT機器と連動する機能を有しています。
また、PMSは大手SIerから事業会社まで、大小様々な企業が開発しており、
システム上登録される各宿泊客のデータは、厚生労働省の定めた「旅館業における衛生等管理要領」に基づき、3年以上の保存が一律に義務付けられています。
例えば、100室のホテルの1年間の宿泊データは36500件、それが100店舗規模のホテルチェーンと考えると年間約300万件を超えるデータがサーバー上に保存されています。
それらのデータは売上管理、会員管理、リピーター管理、そして有事の情報開示用として今まで保存されるのみでしたが、
近年ではこれらのデータを宿泊動向を伴うビッグデータと位置付け、ホテル営業を補助するデータコンサルティングサービスに注力し始めているPMS企業も少なくありません。


ホテルシステム開発の主な企業とプロダクトの紹介

◾️大手SIer企業

日本オラクル株式会社 製品名:OPERA

https://www.oracle.com/a/ocom/docs/hotel-sc-premium-datasheet-ja.pdf

-導入対象)世界のホテルグループの上位10社中8社が、OPERA製品を使用。

外資系ホテルではトップシェアを誇り、世界中の40,000以上の施設が導入。

-導入事例)Melia Hotels International、Best Western Hotels、Melia Hotels International

 

日本電気株式会社(NEC) 製品名:NEHOPS

https://jpn.nec.com/hotel/nehops/city01.html

-導入対象)大規模なシティホテル、施設数の多い全国チェーンでの導入実績が豊富

https://hotelier.jp/pms/nehops

-導入事例)株式会社三井不動産ホテルマネジメント系列、浅草ビューホテル

https://jpn.nec.com/hotel/case.html

 

富士通株式会社 製品名:GLOVIA

https://pr.fujitsu.com/jp/news/2012/09/6.html

-導入対象)ビジネスホテル、シティホテル、旅館

https://hotelier.jp/pms/glovia

-導入事例)京急イーエックスイン、コンフォートホテル

https://www.fujitsu.com/jp/group/fjj/services/application-services/enterprise-applications/glovia/glovia-smart/hotel/hotel/index.html

 

◾️事業会社

株式会社アルメックス 製品名:Wincal

https://www.almex.jp/hs/products/reservation/wincal-asp.html

導入対象)ビジネスホテル・シティホテル

https://hotelier.jp/pms/wincal

導入事例)スーパーホテル、ドーミーイン、R&Bホテル

https://www.almex.jp/case/accommodations/

 

ダイナテック株式会社 製品名:Dynalution

https://www.dyn.co.jp/

-導入対象)ビジネスホテル、シティホテル

https://hotelier.jp/pms/dynalution

-導入事例)京王プレリアホテル、ワシントンホテル

https://www.dyn.co.jp/product/dynalution/

大手SIer、中堅事業会社のシステムともにUI(ユーザーインターフェース)部分が非常に前時代的な印象が見受けられます。

ホテルシステム(PMS)業界は、UX(ユーザーエクスペリエンス)を軸に機能性を最も重要視するという側面があり簡易的なUIになる傾向があります。

ただ、示し合わせたかのようにUIのレベル感が全社的に同一であるのは面白い側面であると言えます。

ホテルスタッフが迷わず、シームレスにチェックイン対応が行えるようシステムが設計されており、現場で扱うPC端末も安価なことが多いため、

操作者とPCの負担軽減のため意図的に画面の簡略化が図られている背景があります。

システムの差別化ポイント

上記のような実際の操作画面を見ると、ホテルシステム(PMS)はどの企業のものを使用しても一見同じように見えますが、明確に差別化されているポイントがあります。
差別化ポイントとして、以下3つが挙げられます。

ホテル業態ごとに機能を最適化
ホテルの業態(リゾートホテル/旅館/ビジネスホテル/民泊/レジャーホテル)ごとに必要とされる機能が異なるため、それぞれの企業のシステムは、ターゲットとしている業態に対して最適化されたものとなっています。

IoTデバイス連動体制の構築
ホテル業界のトレンドとして、IoTデバイスの連動によるCX(カスタマーエクスペリエンス)向上が挙げられます。
代表例として、ホテルシステムと自動精算機の連動が挙げられます。自動精算機を導入することで、チェックイン処理の簡略化・高速化を図り、現場スタッフを接客に注力させることでCX向上に繋げています。
どの企業も、自社製PMSと他社製自動精算機との連動は避けては通れない話題であり、連動機能の開発が進んでいます。
基本的には自動精算機側から送受信されるものはデジタルデータであるため、連動の障壁はそこまで高くないものではありますが、PMS開発側でも組み込み系ソフトウェアの開発知見が重宝される場面も多いです。
他社との連動実績がビジネスチャンスの創出・拡大に繋がるともいえます。

トータルソリューションサービス化
株式会社アルメックスや株式会社ナバックは、PMSと自動精算機の両方を自社開発で提供し、他にも客室Wi-Fiからアメニティ、VOD(ビデオオンデマンドサービス)、客室錠、エレベーター認証に至るまで、ホテル運営に必要なものを網羅しており、ワンストップで保守対応ができることを強みとしています。
システム全般の保守運用が社内完結であり、システム障害時の対応が一元化されていることは他社との差別化ポイントであるといえます。

ホテルシステム開発者に対するソーシング

・ホテルシステム開発環境
-開発言語:C,C++,Go,Java,Kotlin,Swift 等々
PMSはネイティブアプリ(PCや端末にインストールして操作)として開発されることが主流でしたが、近年Webアプリ(ブラウザ上で操作)に移行傾向にあります。
理由としては、エラー・バグ発生時のメンテナンス性の向上、アップデートの自動化、簡略化にあります。
オンプレミスのローカルサーバーからクラウドサーバーが主流になったことも、Webアプリ化を後押しした要因ともいえます。
また、PC以外での宿泊管理を目的とした、タブレット・スマホ専用アプリの開発も進んでいます。そのため、KotlinやSwiftによる開発経験のある方を募集している企業も多いです。
ホテルシステム(PMS)は基本的に、ベースとなるアプリケーションはどの企業も1度開発したものを長期運用するため、開発エンジニアの主な業務は追加機能開発や不具合アップデート、税制変更による会計システム修正対応等になります。
各企業の事情にもよりますが、ゼロベースでのプロダクト開発経験よりもアジャイル的な開発経験がより重要視される傾向にあると思います。

・ソーシング対象について
PMS企業への転職者の過去在籍企業を調査したところ、Web系システム開発を行っている事業会社が8割を占めていました。社格的には小中規模の企業が多く、プロダクトの親和性は特に重要視されていない傾向にありました。
PMS企業でのシステム開発担当をソーシングする場合、
Web系システム開発経験×小中規模事業会社×対象言語 の条件に合う候補者が母集団となります。比較的採用難易度は低いので、数多くの候補者に当たれる可能性が高いです。
上記の条件に見合ったメディアを考慮すると、
Indeed、Green、Forkwell Jobs、Openworkといった小中規模の事業会社のエンジニアの登録が多いメディアが適しているといえます。

自動精算機とは

ビジネスホテルやシティホテルでチェックイン・チェックアウト時に自動精算機を使用したことがある方は多いかと思います。
ビジネスホテルチェーンでは、自動精算機導入がトレンドの時代から当たり前の時代に変わったと言えるほど今や欠かせないものとなっています。
精算機導入のメリットとしては、支払取引の自動化によるチェックイン対応の高速化、ヒューマンエラーの防止、スタッフの省力化、多言語対応によるインバウンド対策にあります。
一方で、高級リゾートホテルや旅館などは、宿泊客をしっかり終始対面で対応することに重きを置いていることが多く、自動精算機を導入することは少ないです。
また、機能上他業界へ適応が可能なためホテル業界以外で各社精算機の導入が進んでいます。
レジャー施設やゴルフ場、病院、ショッピング施設等でホテルで導入されているものと同型モデルがUI/UX・機能を変えて導入されています。
オムロン社やグローリー社は、多種多様な業界に対する券売機・精算機・釣り銭機提供の老舗メーカーであるため、「ホテル業界も」ターゲットに含んでいるという表現が適切であるといえます。

主な自動精算機メーカー紹介

・日本NCRビジネスソリューション株式会社
https://www.ncr-bs.com/solution/hotel.html
導入事例)アパホテル、the b 銀座、城山観光系列

・オムロン株式会社
https://socialsolution.omron.com/jp/ja/products_service/automation/smare/
導入事例)東横INN、コンフォートホテル

・株式会社アルメックス
https://www.almex.jp/products/type/adjustment/
導入事例)スーパーホテル、ダイワロイネットホテル、リッチモンドホテル

・システムギア株式会社
https://www.systemgear.com/solutions/hotel/hotel-payment.html
導入事例)グランビスタホテル&リゾート、富士山ステーションホテル

近年の傾向

この10年間、ビジネスホテルや民泊、レジャーホテル、一部リゾートホテル界隈ではチェックインのDX化が大きなトレンドとなっていました。
自動精算機による多言語対応や省力化・無人化を行うことで、増加傾向にあるインバウンド需要にシステムの側面から効率化を図ることや、キャッシュレス決済対応により、
きたる2020年の東京オリンピックに向けCX向上を狙ったDX化が進んでいきました。
2020年東京オリンピックまでの直前の数年間は特に、新規開業ホテルが東京や京都を中心に乱立し、それに伴い自動精算機メーカー各社も新機種や新機能開発が非常に活発になっていきました。
一方で周知のとおり、2019年に新型コロナウィルス(COVID‑19)が蔓延しオリンピックによるインバウンド需要が消失したため、開業後まもなく倒産・売却されるホテルが見受けられるほど業界としては大きな落ち込みを見せました。
精算機業界もそうした背景から、大きな打撃を受けましたがその一方で、2020年5月より、国から「宿泊施設非接触型サービス等導入支援補助金」制度(https://www.tcvb.or.jp/jp/project/infra/covid19-measures-yado/)が導入され、自動精算機の導入も補助金対象となったことから、コロナバブルといえるほどの賑わいを見せることとなりました。
特に、補助金の期間も2年間という短い期間であったため、導入ラッシュに拍車をかけた形となりました。コロナ禍でも安定した経営基盤を持つ大手ホテルチェーンの多くが当制度を利用し、新規導入や入替を積極的に行っていきました。

精算機の差別化ポイント

自動精算機メーカーでは、内蔵ユニットを内製化することは非常に稀なため(開発コストの影響)、メーカー間の内蔵ユニットを比較した際に、同じユニットが採用されていることは珍しくありません。
勿論、オムロン社やグローリー社のような入出金ユニット製造の老舗が参入していることもありますが、特異な例といえるでしょう。
実際に、ホテルの自動精算機の内部ユニットは、牛丼チェーンやコインパーキングの精算機の内部ユニットと全く同じものが搭載されていたりします。
では、同じようなユニットを搭載した精算機の中で、各社コンペが発生した際はどこで差別化を図っているかというと、導入コストはもちろんのこと、ホテルシステム(PMS)との連動実績に特に焦点が当たります。
この連動実績は、精算機本体の機能性・独自性よりも、一層重視されるポイントです。
なぜなら、ホテルに関連するシステムを1から導入検討する際、まず商談で第一に「ホテルシステム(PMS )」から決定されるという業界の特性があるため、採用されたPMSに対して、どれだけ連動実績があり、ナレッジがあるか、どれだけPMS開発企業と自動精算機メーカーが協力状態で保守体制を構築可能かという点が、ホテル経営者側が精算機導入に対し最も注視するポイントの一つといえるからです。
実際に、導入されたPMSと自動精算機間での通信不具合が多発し、迅速な保守対応が実現できず、他社の自動精算機に乗り換えられてしまったという事例も存在します。
そのためPMS企業と自動精算機企業がいかにアライアンスを組み、連動やエラーに対するナレッジを貯められるかが差別化の鍵となります。

ソーシング対象

自動精算機開発担当者をソーシングする場合は、組み込み系システム開発の知見はもちろんのことですが、差別化ポイントに記載した業界的背景から、
Socket通信・シリアル通信制御の経験が重視されますので、その2点で親和性のある事業に携わっている関係者がいいでしょう。
組み込みデバイス×ネットワーク通信のスキルと連想すると、IoT家電や複合機、自動車系組み込みシステム、遊技機インフラ等々の業界のエンジニアは即戦力といえるでしょう。
ただ、業界や会社規模を考慮すると、他業界での精算機・券売機メーカーのエンジニアの方が、流入可能性は高いのではと見込んでいます。

まとめ

ホテルシステム(PMS)と自動精算機の業界は、いかに対象ホテル業態の現場ニーズに応えられるかが最重要ポイントとなっています。
単純に最先端技術を導入すれば業界のイニシアティブを握れるかと言われればそうではなく、顧客が求める機能が備わっているか、保守体制が整っているか、PMSと精算機の掛け算のパターンにどれだけ対応できるかが鍵となっています。
一方で、精算機業界としては、キャッシュレス決済の普及拡大に反比例して、ニーズが薄まっていくことは確実となる世の中ではあると思います。
今後そのような社会的背景の中、どのような付加価値、機能が搭載された精算機が出てくるかが注目ポイントであると思います。
現状にはない全く新しい機能が生まれる際、必要とされるエンジニアのソーシング人材像も移り変わっていくと捉えています。

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中島 僚介

中島 僚介

明治大学政治経済学部卒業。前職まではサービスエンジニア・CSとして従事。リファラルで当社にCSとして参加。2023年9月からは日程調整ツール「Direct Scheduling」のPdMとして奮闘中。

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