エンジニア採用
2023.07.06

音響エンジニア採用の最新トレンド|成功に欠かせないポイントは

1. 音響技術者の活躍現場

1.1 音響製品開発の今

皆さんは音響製品と聞いてどのようなものを思い浮かべますか?日常生活に音楽や電話をするために用いるイヤフォンやスピーカーが挙げられると思います。しかし、実際にはそれだけでなく非常に多くの場所で活躍しています。車やパソコン、スマートフォンはもちろん、公共施設や映画館、コンサート会場における音響設備等、皆さんの生活を豊かにする上で欠かせない存在です。

最近では、環境規制の対応に伴い環境負荷を軽減する製品の開発が求められたり、VRやAR等の最新技術によって、音響製品の小型化・軽量化が求められ、高機能・高付加価値な製品を実現できる音響機器の需要がますます高まっています。さらに、近年では、AIやIoTなどの技術を活用して、より高度な音響技術を開発する研究現場でも活躍の場が広がっています。

1.2 音響技術者の活躍現場

音響技術者はその専門性と求められる活躍の場の幅広さ故に、非常に多種多様な職種に枝分かれします。ここではその全てを網羅できませんが、いくつかのカテゴリーに分けて説明します。

1. スピーカー、イヤフォンをはじめとした音響機器やシステムを”作る側”の人

  • 音響機器における機構設計, 筐体設計
    • スピーカーやイヤフォン等の音響機器と呼ばれる製品及びそれらの部品を設計・開発します。一般的にイメージされるスピーカー、イヤフォン以外にも、ブザー、補聴器、ゲームコントローラー等の振動子(エキサイター)も同様の技術が使われており、エンジニアの潜む領域は多岐に渡ります。
  • 環境音響の設計・開発
    • オフィスや店舗、ホールなどの音響設備並びに、防音・吸音材等の音をコントロールする製品の開発です。
  • 音響信号処理の研究・開発
    • オーディオ処理、音声認識・音声合成、人間の聴覚特性に基づく音響処理などが含まれます。これらの分野に精通した技術者は、高機能・高付加価値な音響機器の開発に貢献することができます。

2. 音響機器やシステムを”使う側”の人

  • 音響エンジニア
    • 映画やテレビ、ラジオ、コンサート、舞台などで、音響効果のレベルやバランスを調整したり、機材の設置、レコーディング等を担当するのが音響エンジニアです。 ミキサー、PAエンジニアと呼ばれることもあります。”音響エンジニア”という響きは音響機器を開発、製造する側のエンジニアと混同されて記載することが多く、所属企業や職務内容からどのような経験を持った人物か類推することが求められます。

このブログではここから”音響機器の設計・開発”に焦点を当てていきます。

2. 音響機器設計エンジニアの採用戦略

2.1 音響機器設計エンジニアの求められる能力

音響機器といえば、スピーカーやイヤホンが挙げられます。これらは単体で販売されることもありますが、多くは車やスマートフォン等の製品の一部として売られています。従って、設計・開発には様々な音響機器特有の専門知識が求められると同時に工業製品としての生産性や品質担保における知見も含め、幅広い技術領域に跨った知識が必要とされます。以下ではその一部をご紹介します。

  • 音響技術の理解
    • 音響機器が音を発する原理や音響信号処理の知識を持ち、音の特性や振る舞いに関する深い理解を持っていることが重要です。これには音響学、電気工学、信号処理などの分野での学習はもちろん、実際のスピーカーから流れる音を聞き、耳を使って音を評価するといった実践的な経験も含まれます。

参考:Pioneer社製スピーカー周波数特性

参考 : Panasonic社 Technics 試聴ルーム

  • 機構設計スキル
    • 音響機器は様々な部品で構成されています。金属、樹脂、永久磁石等全く特徴が異なる物質を組み合わせるため、僅かな設計ミスが不良品の原因となります。正しく組み立てられるよう、それぞれの物質の特徴を理解し、組み立て後における製品の要求スペックを確実に実現できるような部品の設計が求められます。図面製図のスキルや、各部品の寸法誤差範囲を正しく把握する知見が大いに役立ちます。

参考:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)

  • 量産工程の熟知及び正確かつ分かりやすい設計指示音響機器の設計開発者は製品の製造工程に精通していることも求められます。特に、開発段階で設計者が手作業で作る工程と実際の工場における工程は大きく異なり、更に工場が海外拠点であることが多いため、日本人不在の中でも組み立てられるような正確な技術書での指示が求められます。ネジ止め、半田付け、接着剤塗布等の製造工程一つ一つにおいて設計者の意図が正しく反映されるような組み立て易い機構や、拠点のメンバーが正しく理解しやすい指示書の作成スキルが重要となります。

参考:オンキヨー、インド工場のOEM用スピーカー生産を拡大

  • ソフトウェアツールの扱い
    •  音響機器設計には専門のソフトウェアツールが使用されます。いくつかの例を紹介します。
      • 音響シミュレーションソフト
        • スピーカーを構成する部品の密度、大きさ、形状といったさまざまなパラメータを指定することで周波数特性の予測値を導き出します。
      • 信号処理、回路設計などのためのツール
        • 音声の情報を乗せた電気信号の解析、フィルタリング、スペクトル解析、音声処理などを行うためのツールです。
      • CADソフト
        • スピーカーを形成する部品は金属部品、樹脂部品、永久磁石、コイル等と様々です。それぞれの部品の2次元図面、3Dデータを作成することで実物の部品を発注する際に用いたり、実際に組み立てる際に組み立てが可能かを検証する際に役立ちます。
  • 問題解決能力
    • 複雑で精密さが求められる音響機器の設計において、異常音や故障といった製品の問題が生じた場合に効果的に対処できる能力が求められます。特にクリティカル思考やトラブルシューティングのスキルを持つだけでなく、不良品解析のデータから製造工程に潜むエラーの可能性に気付ける洞察力の深さが重要です。

参考:スピーカーのエッジ交換に挑戦!破れた穴を自分で修理してみた!

2.2. ダイレクト採用成功のための要素

ここからは音響機器エンジニアをダイレクト採用メディアで探す際の重要な要素を説明します。

  • 候補者ターゲットの理解

音響機器エンジニアを採用するにあたって、どこにマッチする人材が潜んでいるかを理解する必要があります。ここでは大きく2つに分類しています。1

    •  現職の音響機器エンジニア
      • 専門知識を多く必要とする音響機器エンジニアは一般的に同業種への転職が多いと言われます。既に音響機器設計に携わっている人をキーワードで検索し、抽出します。
      • キーワード例 : スピーカ(スピーカー), オーディオ, 音響, イヤフォン(イヤホン,ヘッドホン)
      • ソーシングのコツ
        • 表記揺れの多い用語への注意
          • スピーカー、イヤフォン等、カタカナであるために多くの表記揺れの可能性を持つキーワードは注意すべきです。(企業によって表現が様々で、スピーカーは”スピーカ”と表記する企業もあります。)考えられる全てのパターンを入れることでより多くの候補者を拾えます。
        • 記載量の少ない候補者のプロフィール読み取り
          • 設計開発職の多くに言えることですが、守秘義務の都合上開発の詳細情報を職務経歴に書かれない候補者が多いです。 検索に用いたキーワードがどのように職務経歴に盛り込まれているか、候補者がどのような開発経験を積んできたのかを限られた情報から把握することが重要です。
        • 音響機器に関わる学習
          • 上記の2つのコツはキーワードを見たり、ヒアリングを実施してもベースの知識がなければ理解するのに時間を要します。特に音響機器に関わる専門用語は一般的に聞き慣れない単語が多いです。採用担当者でも最低限の知識は事前にインプットしておきましょう。エンジニア程とはいかないものの、採用担当者も自社に必要なエンジニアスキルの知見は常に学び続けることが必要となります。
    • 異業種で活躍する筐体設計,機構設計エンジニア
      • 音響技術エンジニアは前職で音響とは異なる製品開発の職歴を持ち、転職してくる方も少なくありません。特にCADソフトを使用して機械設計,筐体設計に関わっていたエンジニアは幅広い業界に一定数おり、音響専門知識を身につける点をクリアさえすれば精密な部品を組み合わせる機構の設計開発において即戦力になり得ます。
      • キーワード例
        • 経験領域 : 例多くの部品を組み合わせ、品質向上が求められる製品領域がより親和性があると言えます
          • 自動車部品
          • スマートフォン
          • 家電製品
        • 設計関連
          • 機械設計
          • 機構設計
          • 筐体設計
      • ソーシングのコツ
        • 設計開発は非常に多種多様な職種のため、単純に設計職のみで検索すると求めていない候補者を抽出してしまい多くの時間を要します。
        • 音響機器の設計開発を担う上でどのようなスキルを現場が求めているのかを理解し、適切な経歴を持つ候補者イメージを持って検索することが重要です。
        • 経験領域と設計用語を掛け合わせることでより高精度で求める像に近い候補者を抽出できます。上記は一例であるため、現場へヒアリングし、実際に異業種を経て入社した中途採用者の例を知ることで様々な検索パターンが生まれます。
  • 音響業界特有の動向及び代表的な企業の把握
    音響機器は動向が激しい業界です。特に2010年~2020年は多くの老舗メーカーで廃業、買収、分社化の動向が見られました。ニュースを始め業界動向を注視し、エンジニアの流出を察知することも重要な要素となります。ここでは音響機器に関わる代表的なメーカー名を記載します。

    • ヤマハ株式会社
    • ソニー株式会社
    • パナソニック株式会社
    • パイオニア株式会社
    • オンキヨー株式会社
    • フォスター電機株式会社
    • フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
    • 株式会社デンソーテン
    • アルプスアルパイン株式会社
    • JVCケンウッド株式会社

3. 音響技術採用の最新トレンド3選

音響技術者はこれまで通り製品を設計し、世に送り出すだけでは不十分と感じる方も多くいます。近年注目される音響製品にまつわる技術トレンドをご紹介します。

3.1 高音質

イヤホン、ヘッドホンに求められる重要な要素の一つに音質があげられます。ソニーグループはパッケージスピーカーシステムを組み合わせることで高いシェアを持ち、ヤマハやエレコムなどの競合他社に差をつけることに成功しています。最近では、ネット経由で取得した音楽や映画の音声の質を高める高級スピーカーの開発にも注力しています。

3.2 アクティブノイズキャンセリング

ステレオなどの音質を高める機能の他、最近では周囲の雑音を最小化する「ノイズキャンセリング型」も人気トレンドです。ソニーグループは22年に雑音を軽減するセンサーを2倍に増やしたワイヤレスヘッドホンの新製品を投入。パソコンでのゲーム向け市場にも参入し、雑音を消す機能を搭載したヘッドセットを発売しました。

3.3 ワイヤレス

近年、スマートフォンやタブレット端末の普及によって、ワイヤレスイヤホンが注目を集めています。ワイヤレスイヤホンは、スマートフォンやタブレット端末と接続し、音楽や動画などのコンテンツを手軽に楽しむことができます。また、アクティブノイズキャンセリング機能が搭載され、周囲の騒音を軽減することができる製品も登場しています

4. まとめ

音響技術者は、多様な業界で求められ、今後も需要があると予測されています。しかし、多機能化・高機能化が求められる中でのエンジニア採用成功に繋げるには専門知識を学ぶことが求められています。さらに、ダイレクト採用のスピードを加速するためにも、現場と協力してお互い理解しながら進めていくことが重要です。

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松野 祥己

松野 祥己

岡山大学大学院卒業。フォスター電機株式会社にスピーカ設計開発者として入社。ハイエンドカーオーディオのスピーカユニット開発を担当。その後、株式会社ダイレクトソーシングへカスタマーサクセスとして参加。前職で培った設計職経験を活かし、エンジニアの採用成功を目指して活動している。

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