人事ノウハウ
2024.05.16

360度評価とは?テンプレートや評価コメントの例文まで紹介

360度評価とは、従業員1人に対して上司・同僚・部下など複数の関係者が評価を行うことです。
評価シートを用いて各項目を5〜6段階で評価し、評価コメントを記載します。

客観性が高まる・被評価者が納得しやすいといったメリットによって注目される一方で、評価者が増えるため全社的な負担が増すなどのデメリットも存在します。
そのため、360度評価の導入に悩む企業も多いのではないでしょうか。

また導入するにしても「どのような評価項目を設けるべきか」「評価コメントにはどんなことをかくのか」など、疑問が後を絶ちません。

そこで今回は360度評価について、定義やメリット・デメリット、失敗しないためのポイントを解説します。
評価項目のテンプレート、評価コメントの例文も紹介した実践的な内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

360度評価とは

360度評価とは、従業員1人に対して上司・同僚・部下など複数の関係者が評価を行うことです。
従来は、上司の1方向から評価を行うのが一般的だったのに対して、同僚や部下など多方面から評価を行います。
こうした状況を「360度」と例えているのです。
取引先や顧客の声を評価に反映するケースもあります。

具体的には、評価シートに記載された各項目を5段階〜6段階で評価します。
評価項目は、例えば「目標を達成するために自らの役割を理解している」「困難な状況下でも課題解決に向けて努力できている」などです。
評価シートの最後では、評価コメントを記載します。

一般的には、各評価者が記載した評価シートは中立的な立場として人事が集計します。
集計結果は被評価者の上司に共有された後、本人との面談やフィードバックに活用されます。

360度評価のメリット


360度評価のメリットを3つ紹介します。

客観性の高い評価が可能

客観性が高い評価を行える点は、360度評価のメリットです。
評価者は「上司・同僚・部下・関係部署の上司や従業員・上司の上司」など多岐にわたるため、客観性は自然と高まります。

また、例えば「上司からの評価ばかり高く、部下からの評価は低い」といったケースも浮き彫りになります。
反対に「上司からの評価は低いが、部下からは支持・信頼されている」といったケースもあるでしょう。

被評価者が納得しやすい

評価を受ける側が納得しやすいのも、360度評価のメリットです。
複数名による360度評価の客観性が高いことは被評価者も理解できるため、評価を受け入れやすいといえます。

とくに望まない評価を受けた場合、特定の上司による評価のみでは「評価者(上司)が分かっていないだけ」と解釈してしまうリスクがあります。
一方で360度評価においては複数名による評価結果のため、納得度が向上するのです。

さまざまな課題を発見できる

ここまでに述べてきた通り、360度評価では1人を多方面から評価します。
そのため、上司では気付けなかった課題に部下が気付くケース、自部署内では知り得ない場面での行動を他部署の従業員が評価するケースなどが起こります。
このように、被評価者が成長するためのポイントとなる課題をより多く発見できる点は、360度評価のメリットといえるでしょう。

360度評価のデメリット


360度評価のデメリットを3つ紹介します。

評価者が多いため全社的な負担は増してしまう

評価者が多いため、全社的には負担が増してしまいます。
従来の評価手法であれば、特定の上司が1人またはごく少数で評価を行えば完了でした。
ただ360度評価では、その何倍もの従業員が評価作業を行うことになるため、労力・作業時間・人件費も複数名分かかってしまうのです。

個人的な感情が評価に入り込むリスクが高まる

個人的な感情が評価に入り込むリスクが高まる点は、360度評価のデメリットといえます。
360度評価では、これまで他者の評価を経験してこなかった従業員も含まれることになります。

評価経験が少ない場合、個人的な感情を排除した評価に慣れていません。
そのため、本人の自覚がないまま偏った評価を行ってしまう可能性があるのです。

互いを気にして評価が甘くなるリスクがある

360度評価では、互いの評価を気にして評価が甘くなるリスクがある点もデメリットです。
360度評価においては、互いを評価しなければならない状況が起こります。
そうなると「自分が悪い評価を付けると、相手も悪い評価を付けるのではないか」といった不安が生じがちです。

こうした不安を払拭してより正確な評価を実現するためには、次の項目で紹介する「匿名性の担保」が大切といえます。

360度評価で失敗しないためのポイント

360度評価で失敗しないためのポイントを5つ紹介します。
360度評価を導入する際の参考にしてください。

目的や評価方法の周知を徹底する

360度評価の目的や評価方法を、周知徹底しましょう。

前述の通り360度評価導入によって、従業員の負担は必然的に増します。
そのため、理解を得られなれば、不満につながりかねません。
そこで「360度評価がなぜ必要なのか・何のために導入するのか」といった目的を事前に知らせて、賛同を得ておくことが欠かせないのです。

また、評価に慣れていない従業員も少なくありません。
評価者用のガイドラインを作成・共有するなどして評価方法の理解を促しましょう。

最終的な評価点は平均値にする

最終的な評価点は、平均値にするのがおすすめです。
平均値にする利点は次の通りです。

  • 匿名性が向上する
  • 評価の偏りを緩和できる
  • 複数の評価結果を渡されるよりも理解しやすい
  • 平均した上で偏っていれば客観性が高い特徴として納得できる

客観的に評価できる項目にする

360度評価の各項目は、客観的に評価できるものにしましょう。
なお各項目に対する5〜6段階評価で行うのが一般的です。

例えば、「協調性がある」という項目では客観的に評価しにくく、主観的な評価を誘発させてしまいます。
そこで、「目標達成に向けて他者と積極的かつ良好に協力できているか」のように行動ベースの内容にすることがポイントです。

また、改善点を具体的に記載するためのコメント欄を設けるのもおすすめです。
加えて、自由記述用のコメント欄を設けて評価に対する補足や根拠などを記載できるようにすると、評価内容の具体性が高まります。
ただし、評価者が特定されないよう自由記述の記載には注意が必要です。

評価後のフォローを行う

360度評価においても評価後のフォローは不可欠です。
具体的には、面談の機会を設けて、評価結果を基にしたフィードバックを実施します。
この際、あくまでも評価結果をベースとして、主観が入り込まないように注意が必要です。
そして課題点や改善点を共有し、次回に向けた目標設定まで行います。

評価がゴールではなく、評価結果を活かして個々の成長や組織の発展を実現することが目的であることを忘れないようにしましょう。

匿名性を担保する

360度評価を行う上で匿名性を担保することは、重要なポイントです。
匿名性が保たれているからこそ、忖度の無い評価を行えます。
集計の担当者が秘密を厳守するのは当然ですが、評価者となる各従業員が「自らが行った評価は、一切他言してはならない」などのルールを徹底させる必要があります。

360度評価のテンプレート|具体的な評価項目

相対評価

360度評価のテンプレートとして、360度評価シートを作成する際にそのまま引用できる具体的な評価項目を表形式で紹介します。
役職・部署ごとなど、より使いやすい表現や項目にアレンジしてご活用ください。

なお評価の点数は、5段階もしくは6段階です。
5段階が一般的ですが「3.どちらでもない」への偏りを防ぐために、6段階にするケースもあります。
自社の傾向を踏まえて最適な方を選びましょう。

■5段階評価の場合

評価点
評価基準
5
非常にあてはまる
4
あてはまる
3
どちらでもない
2
あてはまらない
1
全くあてはまらない

■6段階評価の場合

評価点
評価基準
6
非常にあてはまる
5
あてはまる
4
ややあてはまる
3
ややあてはまらない
2
あてはまらない
1
全くあてはまらない

「目標達成」に関する評価項目

全社的な目標達成は、従業員がそれぞれの目標を達成することにより実現します。
そのため、360度評価においても以下のような目標達成に関する項目を設定することが必要です。

■目標達成

評価項目評価視点評価点数
達成志向目標を達成するための意欲や前向きな姿勢がみられる
計画性目標達成に向けて具体的な計画を立てて取り組めている
役割理解目標を達成するために自らの役割を理解している
状況適応困難な状況下でも目標達成に向けて努力できている
協力性目標達成に向けて他者と積極的かつ良好に協力できている

「課題解決」に関する評価項目

日々の業務で生じる課題を各従業員が自ら乗り越えることは、全社的な目標達成ひいては企業としての発展に大きく影響します。
360度評価では、課題解決に関して以下のように評価します。

■課題解決

評価項目評価視点評価点数
課題設定日々の業務で取り組むべき課題を明確に設定できている
設定精度目的や目標に沿った課題を設定できている
解決姿勢設定した課題に対して解決するための意欲や前向きな姿勢がみられる

「コミュニケーション」に関する評価項目

コミュニケーションの重要性についてはあらためて述べる必要はありませんが、360度評価においては以下のような評価項目を設定します。

■コミュニケーション

評価項目評価視点評価点数
傾聴姿勢相手に共感を示しながら、話や意見を最後まで聞いている
質問力積極的かつ的確に質問を行えている
伝達力説明や発言が分かりやすい
報連相報告・連絡・相談を適切な頻度とタイミングで行えている
積極性ミーティングなどの場で積極的に発言できている
受容力異なる意見であっても直ぐに否定せず、まずは認めている

「人材育成」に関する評価項目

人材育成に関する評価項目は、以下のように設定しましょう。
ただし、部下や後輩をもたない新入社員の場合、本項目は省略可能です。

■人材育成

評価項目評価視点評価点数
率先垂範部下に指導していることを上司自らが実践できている
分かりやすさ指導やアドバイスが的確かつ分かりやすい
思考促進指示だけでなく、部下が自ら考える機会を与えている
褒める力部下の行動を褒めることができている
指導・指摘必要な場面では適切に指導・指摘を行えている

「リーダーシップ」に関する評価項目

リーダーシップは管理職にのみ求められるスキルではありません。
一般の従業員においても重要なスキルのため、以下のような評価項目を設けて、スキル向上を促しましょう。

■リーダーシップ

評価項目評価視点評価点数
状況理解部下が取り組む仕事の進捗状況を正しく把握できている
集約力さまざまな意見をまとめて、メンバーの納得度を高めることができている
公平性感情にとらわれず公正・公平な評価や対応ができている
フォロー困っている部下に対してフォローの手を差し伸べている
信頼性周囲から信頼されている
けん引力自社が目指す方向へメンバーをリードできている

「組織形成」に関する評価項目

組織形成に関する評価項目では「自社が目指す方向に対する姿勢や貢献度」を評価します。
具体的には以下の通りです。

■組織形成

評価項目評価視点評価点数
理念の理解自社の理念を理解している
方針の理解全社目標など自社における今後の方針を理解している
行動規範の実践行動規範を実践できている
取り組み姿勢全社的な方針に対して前向きに取り組んでいる
協力性必要に応じて他部署のメンバーと協力して取り組めている

「具体的な改善点」の記入欄

360度評価に限らず、すべての評価手法で大切なのは「具体的に何を改善していくべきかを明確にすること」です。
そのため、360度評価シートでは段階評価の後に、以下のような自由記入欄を設けることをおすすめします。

■具体的な改善点

今回の評価を踏まえて、改善が必要と思われる点を具体的に記入してください

「評価コメント」の記入欄

段階評価による評価のみでは、評価しきれない内容や補足が必要な内容も発生します。
そこで、以下のように自由記述が可能な「評価コメント」を設けると良いでしょう。

■評価コメント

ここまでの項目で評価しきれなかった点や補足したい点などを自由に記入してください

360度評価のコメント例文


360度評価のコメント例文についてです。
360度評価を行う際には「評価コメントをどう書けばよいか」を迷いがちではないでしょうか。
そこで、ここでは「上司・同僚・部下」の3パターンに分けてコメント例文を紹介します。

また評価コメントを行う際に共通して意識すべきポイントは、次の通りです。

■評価コメントを書く際のポイント

  • 個人的な感情を反映しない
  • 秘匿性は担保されているため忖度の無い評価を行う
  • 状況や背景を具体的に記載する
  • 事実および行動ベースで考えると書きやすい
  • マイナス評価はプラス評価とあわせると書きやすくなる
  • マイナス評価は「~するとより良くなる」「~だと望ましい」といった表現にすれば書きやすくなる

これらのポイントを踏まえて、以下の例文を参考にしてください。

上司への評価

従来であれば自らを評価する立場である上司への評価コメントは、とくに内容に悩みがちです。
秘匿性は担保されていることを理解して、忖度の無い評価を行いましょう。

↓コメント例文(上司への評価)↓

  • 営業の目標達成で悩んでいる際、個別で面談を提案してくださった。面談ではロープレを行い、説明の順序や切り返しに役立つ言葉など具体的なアドバイスがあった。部下指導および育成に対する熱意を感じた。
  • こちらから報告や連絡をする際、丁寧に聞きながら関連情報やアドバイスをくださるのは大変ありがたいが、毎回30分以上に及ぶ。時間を意識してもう少し要点をおさえたコミュニケーションができると業務効率がより高まる。

同僚への評価

同僚への評価は、近しい存在であれば仕事以外でのイメージまで入りがちになりますが、切り分けて考えるように心がけましょう。
また、慣れ合いによる甘い評価も避けなければなりません。

↓コメント例文(同僚への評価)↓

  • 常に前向きな姿勢を保てている点が良い。例えば、目標達成が危ぶまれてプロジェクトチームの士気が低下した際には、前向きな発言でチームを鼓舞してくれた。
  • 発言に具体性や根拠があるとより良い。積極的に発言する姿勢は好感が持てるものの、ミーティング時の意見などに感覚値によるものが多く意見の扱いが難しいケースがある。数値や事実に基づく発言を心がけてほしい。

部下への評価

部下への評価は、上司や同僚と比較すれば書きやすいですが、コメントでの言葉遣いが厳しくなり過ぎないように気をつけましょう。

↓コメント例文(部下への評価)↓

  • 課題発見力・課題解決志向に優れている。日々の業務において、今自らに何が不足しているのかを冷静に見極める力を持っている。また上司としてアドバイスをしようと思っていた点について、先に本人から相談を持ち掛けられたこともあった。
  • 落ち込みやすい傾向がある。事実に基づいた指摘や指導をした際、反省の態度がみられるのは好感を持てるが、落ち込んだままの気持ちを引きずってしまうケースが見受けられる。気持ちの切り替えを意識的に行えることが望ましい。

360度評価で高評価を得る人材を採用するには

360度評価で高評価を得る人材を採用したいと考える企業は多いのではないでしょうか。
もしくは、360度評価のような評価制度を企業に導入した経験・実績がある人材が必要なケースもあるでしょう。

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まとめ

360度評価とは、従業員1人に対して上司・同僚・部下など複数の関係者が評価を行うことです。
評価シートに記載された各項目を5段階〜6段階で評価し、最後に評価コメントを記載します。

360度評価のメリットは「客観性の高い評価が可能」「被評価者が納得しやすい」「さまざまな課題を発見できる」の3点です。
対してデメリットは「評価者が多いため全社的な負担は増す」「個人的な感情が評価に入り込むリスクが高まる」「互いを気にして評価が甘くなるリスクがある」の3点でした。
360度評価の導入を検討する際の参考としてください。

360度評価のテンプレートとして、具体的な評価項目を紹介しました。
具体的には「目標達成」「課題解決」「コミュニケーション」などの6項目と、「具体的な改善点」「評価コメント」の自由記入欄2つです。

評価コメントについては、例文を「上司・同僚・部下」に分けて紹介しています。
共通して大切なポイントである「個人的な感情を反映しない」「状況や背景を具体的に記載する」などを意識して、被評価者の気づきや成長につながるコメントにしましょう。

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竹村 朋晃

竹村 朋晃

株式会社ダイレクトソーシング CEO (プロフィールはこちらをクリック) 2005年に野村総合研究所に入社。損害保険システムの構築に従事。2015年11月より株式会社ダイレクトソーシングを立ち上げ。エンジニア経験者中心にデータドリブンリクルーティングを中心としたサービスを展開。