磁気テープ業界でダイレクトリクルーティングを実践してみました
目次
はじめに
ダイレクトリクルーティングを自社でもやりたいと思いつつも、どのように行えばよいのか分からず、足踏みしていませんでしょうか?
本記事では、私が過去勤めていたニッチな業界である磁気テープ業界を題材にし、ダイレクトリクルーティングを磁気テープ業界で実施していくフローをご紹介します。
メジャーな業界・ニッチな業界に限らず、ダイレクトリクルーティングの可能性を感じていただければと思います。
磁気テープ業界について
はじめに、題材とした磁気テープ業界についてご説明します。
そもそも磁気テープ自体、近年需要があるのか?と疑問に持つ方がいると思います。
to C向けのいわゆるVHSは目にする機会がなくなりましたが、to B向けのLTOテープと呼ばれる磁気テープは現在も需要があり、私自身もLTOテープの開発・製造に携わっていました。
LTOテープとは?
LTOは、Linear Tape-Openの略称であり、磁気テープ技術の名称です。
LTOテープは数10TBの記録容量を持ちつつ、他の記録媒体と比較して、長期間(30年以上)のデータ保存が可能であり、テープ自体の価格が低く、消費電力を抑えることができる等の特徴があります。
使用用途としては、主にデータのバックアップに用いられており、IT企業、放送局、制作会社、病院、銀行等で使用されています。
出典:手のひらサイズに30TB!低コストで50年以上の長期保管が可能な「FUJIFILM LTO Ultrium8 データカートリッジ」
LTOテープの作り方
LTOテープの材料は、記録の要となる磁性粉(下記画像参照)、テープの土台となる樹脂製のベースフィルム、磁性粉を塗料化する為の溶剤・添加剤になります。
製造工程としては、大きく分けて7つの工程があります。
それぞれの工程で必要な知識・技術が異なる為、LTOテープは様々な知識・技術の結晶とも言えます。
工程 | 役割 |
---|---|
磁性粉を作る | 磁性粉の元となる複数の原料を合成し、磁性粉を作る |
塗料を作る | 磁性粉に溶剤・添加剤を混ぜて、塗料化する |
塗料を塗る | ベースフィルムに磁性粉塗料を均一に塗る |
テープ表面を平滑にする | テープ表面に熱と圧力をかけて、表面を平滑にする |
テープを切る | テープを製品サイズ幅に切る |
信号を書き込む | 記録に必要な信号をテープに書き込む |
巻き取る | 完成したテープをカートリッジに組み込む |
出典:JAITA テープストレージ動向-2022版(PDF)
LTO業界
LTO業界に参入している主な企業は、下記の5社になります。
- 富士フィルム
- SONY
- IBM
- ヒューレット・パッカード
- Quantum
磁気テープ業界でダイレクトリクルーティングを実践
磁気テープ業界について、簡単に内容を紹介したところで、実際に候補者へスカウトを送る為の準備を行ってみたいと思います。
今回は磁気テープの材料である磁性粉を開発する人材をダイレクトリクルーティングで採用したいという設定で進めていきます。
ペルソナ整理
実際にどういうスキル・経験を持った人材が欲しいのかを整理します。
今回は私のこれまでの経験を加味した上で、表に採用したい人材像を簡単にまとめてみました。
採用要件 | 理由 | |
---|---|---|
必須 | 27歳~35歳 | 社会人経験が3年以上かつ即戦力として活躍してほしい |
高専卒・理系大卒以上(材料系を専攻していればなお良い) | 磁性粉の開発はアカデミックな領域の為、専門的な勉強を行ってきた人材が良い | |
有機・無機化学 or 結晶学分野の知見・経験 | 磁性粉合成において必要な為 / 両分野に知見・経験があればなお良い | |
材料開発の経験 | 磁性粉に限らず、材料開発の進め方が分かっていれば、キャッチアップが早い | |
歓迎 | 磁性材料の開発経験 | 即戦力として期待できる |
電磁気学分野の知見・経験 | 磁性粉合成において有用な知識 | |
材料合成のプロセス構築経験 | 磁性粉合成において有用な知識 |
メディア選定
採用したい人物像のスキル、年齢、年収等をもとにスカウトに使用するメディアを選定します。
メディアごとに登録者の特色が異なります。今回の場合はざっくりと材料系のエンジニアが登録しているメディアであることが望ましいです。
適切なメディアの選定方法は様々ですが、今回は弊社の50万通以上のスカウトデータベースを活用して選定してみます。
下記は材料・化学系エンジニアのスカウトデータをバブルチャート化したものです。
バブルチャートより、母集団の規模やスカウトへの反応の良さを見ると、LinkedIn、BizReachが適切だと思います。
BizReachの方が転職活動をアクティブに行っているユーザーが多いメディアではある為、今回はBizReachを使用することにします。
検索条件
選定したメディアを使用して、人材を検索していきます。
検索条件の設定は様々ですが、ペルソナ整理時の採用したい人材像をもとに条件を決定します。
BizReachの実際の検索画面にある項目のうち、今回は下記検索設定で人材を検索します。
検索条件項目 | 入力内容 |
---|---|
職種 | 化学 / 研究・開発、素材 / 研究・開発 |
キーワード | 磁性 磁気 磁石 |
年齢 | 27~35歳 |
学歴 | 高専・専門・短大卒 以上 |
最終ログイン | 1ヶ月以内 |
就労状況 | 就業中 |
スカウト対象者選定
検索にヒットした人材のプロフィールを1人ずつ確認していき、採用したい人物像と合致しているのかを確認していきます。
プロフィールの記載量や書き方は人それぞれで異なる為、読み取れる情報からスカウトしたい人材を選定し、採用したい人材にはスカウトメールを送付します。
以上が、ダイレクトリクルーティングのフローになります。
ダイレクトリクルーティングを実施する上でのポイント
ペルソナ像の明確化
ペルソナ像が明確ではない場合、どんな人材が欲しいのか、どのメディアを使えば良いのかが分からなくなり、見当違いの人材をスカウトしてしまう可能性があります。
自社が欲しい人材をスカウトしたい場合はペルソナ像を明確にするために、今どのような人材がほしいのかを追求し、正しく言語化できるレベルまで落とし込むようにするのがポイントです。
求めるスキルの抽象化
ベストマッチな人材が検索であまり見つからない時は、求めているスキルを抽象化してみることをおすすめします。
例えば、今回の題材の場合「磁性材料の開発を行っている人」で検索すると、ヒット数は少なくなりますが、「材料開発を行っている人」と抽象度を高めた場合は、ヒット数が多くなります。
抽象化具合については、やりすぎてしまうと求める人材から外れてしまう可能性もあるので注意は必要ですが、採用したい人物像に求めるスキルについて、細分化し、譲れない部分と妥協できる部分を区別することはダイレクトリクルーティングを成功させるポイントの1つです。
魅力の訴求
自社の魅力をスカウト文に記載し、スカウト対象者に魅力を伝えましょう。
数ある会社の中で自社だからできることを伝えられるとベストです。
自社と他社の差別化がうまくできない場合は、複数の魅力の掛け算で考えることをおすすめします。
色々な角度から自社や競合他社を研究・調査し、自社の魅力を複数個見つけ、掛け合わせていくことで、自社のポジションを確立し、スカウトした方の興味を惹くことができます。
タレントプールの有効活用
採用したい人物像に高いスキルを求めていたり、ニッチな業界や業種の場合、条件にマッチする人材数はかなり少ないです。
その限られた人材に対して有効にアプローチを行うことで、自社が求める人材を採用できる可能性が高まります。
具体的には、マッチする人材へのファーストコンタクトを行った後、そこでアプローチを終了せず、定期的に接点を持つように情報を発信します。
1回目のスカウトの時点では、転職を考えていなかった場合でも、別のタイミングでのアプローチを通して選考に進む可能性がある為、中長期的な目線でダイレクトリクルーティングに取り組むことが重要です。
まとめ
磁気テープ業界を題材にして、ダイレクトリクルーティングを実際に行うフローをご紹介させていただきました。
ダイレクトリクルーティングについて、少しでも理解が深まっていたら幸いです。
ダイレクトリクルーティングは今回ご紹介したフローに沿ってPDCAを回し、スカウトに対する返信率を高めたり、カジュアルな面談によりスカウトした方から応募を獲得する施策など、お伝えし切れていない奥深い一面もあります。
この記事を通して、ダイレクトリクルーティングを自社でトライしてみたいと思っていただけたら幸いです。
また、ダイレクトリクルーティングを実施する上で何かお困りごとがございましたら、弊社へお気軽にご相談ください。
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松崎 翔
仙台高等専門学校専攻科を卒業後、記録媒体製造会社に入社。主に生産プロセスの改善、新規材料の開発を担当。その後、株式会社ダイレクトソーシングにカスタマーサクセスとして入社。メーカー、IT、コンサルティング業界など、幅広い業界の採用支援に従事。