エンジニアの採用基準の決め方とは?要件定義から運用方法まで具体例とともに解説
こんにちは、ダイレクトソーシングの野溝です。
エンジニア採用を進める上では、採用プロセスや予算を検討するだけではなく、どのような人物を採用するかを決める「採用基準」を策定する必要があります。
転職市場では高いスキルを持ったエンジニアの数が少なく、業界全体で需要が高まっていることから、エンジニアの採用難易度は年々上昇しています。
その中で明確な採用基準を設けていなければ、入社後のミスマッチを起こし採用活動が長期化する可能性も高くなるでしょう。
本記事では、エンジニア採用を中心としたダイレクト採用支援に強みを持つ私たち株式会社ダイレクトソーシングの知見をもとに、採用活動を成功に導くためのエンジニアの採用基準について解説します。
よくある失敗例から、基準策定後の運用方法まで詳しくご紹介しているので、自社での採用活動にお役立てください。
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目次
エンジニアの採用基準を決めるメリット
採用活動における採用基準は、自社にマッチした人材を適切に採用するための評価基準を表します。
明確な採用基準を設けておくことにより、エンジニアの採用活動を的確かつ迅速に進めることが可能となり、コスト・工数の削減にもつながります。
ほかにもエンジニアの採用基準を決める主なメリットとして、次の3つが挙げられます。
- 入社後のミスマッチを防止できる
- 客観的な評価で選考を進められる
- 自社の魅力を打ち出しやすくなる
それぞれ解説していきましょう。
入社後のミスマッチを防止できる
明確な採用基準を設ければ、入社後のミスマッチによる早期離職・採用活動の長期化を防ぐことが可能です。
エンジニアの採用活動に携わる人事担当者は、プログラミングスキルに精通しているとは限らないため、応募者がどれだけ優秀な人材なのかを適切に判断できないケースがあります。
現場のエンジニアが毎回選考に携わることも難しいため、採用基準を設けておかなければ入社後のミスマッチを起こしやすくなる危険性があります。
客観的な評価で選考を進められる
エンジニアの採用基準を用意しておくことで、面接官の主観による判断を減らし、客観的な評価基準をもとに選考を進められるメリットも得られます。
どれだけ公平に評価したつもりでも、無意識に面接官の印象が評価に反映されることは珍しいことではありません。
明確な評価基準をもとに客観的に選考を進めることで、企業が求める人材を落とすリスクを抑えることが可能です。
自社の魅力を打ち出しやすくなる
採用基準を明確化し、採用ペルソナを設定しておくことにより、自社の魅力や強みを効率的に打ち出せるようになるメリットも生まれます。
採用ペルソナに刺さる魅力を発信することで、ヘッドハンティングやダイレクトリクルーティングなどの「攻めの採用」の成功率も向上します。
エンジニアの採用基準策定で失敗するケース
エンジニアの採用基準を策定したものの、実際に運用してみると母集団が全く集まらなかったり、思わぬ理由で早期離職が発生してしまったりと、失敗に終わる企業も少なくありません。
採用基準策定で失敗するケースで共通するのは、以下の3つです。
- 経営者や人事担当だけで決めてしまう
- 採用基準のハードルが高すぎる
- ソフトスキルの要件定義が抜け落ちている
一つひとつ解説していきましょう。
経営者や人事担当だけで決めてしまう
専門性の高い職種であるITエンジニアは、非エンジニアの経営者や人事担当だけで採用基準を決めてしまうと、選考中や入社後にミスマッチを起こす可能性が高くなります。
たとえば、経営陣は若手の育成を進めたいと考える一方で、現場では人手不足のため即戦力のエンジニアを欲しているなどの状況が考えられます。
そのため採用基準を決める際には、現場の声も充分に取り入れながら策定することが重要です。
採用基準のハードルが高すぎる
転職市場における自社の競争力や、業界を取り巻く状況などを考慮せず、理想の条件だけで採用基準を決めてしまった場合、選考対象となる人材が極端に少なくなるケースもあります。
特に近年ではエンジニアの採用難易度が上昇傾向にあり、大企業でも未経験者のポテンシャル採用を進める例があるほどです。
理想だけで採用基準を策定するのではなく、媒体を使った競合調査や市場調査を実施しながら、現実的な採用基準を決めることが大切です。
ソフトスキルの要件定義が抜け落ちている
習得言語や資格、開発経験や学歴など客観的に計測できるハードスキルだけではなく、性格・価値観・キャリアビジョンなどのソフトスキルを決めておくことも、採用基準を策定する上では重要な要素です。
ハードスキルのみで採用基準を決めた場合、現場のチームとの不協和を起こし、業務が円滑に回らなくなる危険性もあります。
- コミュニケーション能力
- 論理的思考力
- チームワーク
- 学習意欲
- 共感能力 など
上記は一例ですが、こうしたソフトスキルを定めておくことで、面接でも合否の判断が下しやすくなるでしょう。
エンジニアの採用基準を決める5つのステップ
続いて、エンジニアの採用基準を決める具体的な流れについて、5つのステップでご紹介します。
下記のフローに沿って、採用したいエンジニアの客観的な基準を決めましょう。
- 採用活動の目的を言語化する
- 現場とともに必要な要件・スキルを定義する
- 必須条件・優遇条件・求める人物像を決める
- 採用市場・競合他社の状況を把握する
- 応募者視点に立った求人票を作成する
それぞれ詳しく解説します。
採用活動の目的を言語化する
最初のステップは、エンジニア採用の目的を明確化・言語化することです。
今回エンジニア採用という判断に至った背景について、企業が抱える経営課題や、採用活動後に叶えたい理想の状態を定義し、具体的な採用基準を作成する判断材料として活用します。
たとえば、案件増加に対応するために人員補充を検討している場合には、増加している案件の分野や、不足しているポジション・スキルを明確化してターゲットを絞っていきます。
現場とともに必要な要件・スキルを定義する
次に、現場のエンジニアとともに求める人材の要件・スキルを定義します。
現場の声を反映しながら、できるだけ具体的な採用ペルソナを決めるのが望ましいでしょう。
ただし現場でヒアリングを行う際には、どのような人材が欲しいかを尋ねるのではなく、どのような人材が活躍しているかを調べることがポイントです。
募集ポジションですでに活躍している社員がいるのであれば、どのようなスキル・経験・共通点を持った人物なのかを洗い出すと良いでしょう。
あくまでも空想上のペルソナで終わらないよう、現実的に要件・スキルを定義しましょう。
必須条件・優遇条件・求める人物像を決める
続いて、内定を出す基準となる採用条件を細かく設定していきましょう。
たとえば、必須条件・優遇条件・求める人物像(ソフトスキル)の3つの観点から採用基準をまとめると良いでしょう。
下記ではフロントエンドエンジニアの採用基準の一例をご紹介します。
- HTML5、CSS3、JavaScriptの実務経験3年以上
- スマートフォン向けWebサイト制作・アプリケーション開発の実務経験3年以上
- React・Vue.jsなどのフレームワークを利用したSPAの開発経験
【優遇条件】
- レスポンシブWebデザインの構築経験
- アクセシビリティ・ユーザビリティ、セキュリティに関する知識
- Android・iOSプラットフォームに関する知識
【求める人物像】
- 新しい技術に興味があり、コツコツ学習できる方
- チームで何かを開発することが好きな方
- デザインにも興味がある方
「必須条件」では、採用ポジションの実務上、最低限必要となる条件を設定します。
言語や開発経験、自社開発・受託開発のいずれに携わってきたのかを基準として設けると良いでしょう。
必須条件が多くなると応募へのハードルが上がり応募者が少なくなるため注意してください。
「優遇条件」には、必須ではないが自社にマッチする人材として歓迎するスキルについて設定します。
入社後の研修や資格取得によって補えるスキルは、優遇条件に設定すると良いでしょう。
「求める人物像」では、コミュニケーション力やチームワーク、論理的思考力などのソフトスキルを中心に採用基準を定義します。
面接での判断基準として、ワークライフバランスを重視するかガツガツ働きたいのか、技術を伸ばしたいのかマネジメントに興味があるのかなど、価値観やキャリアビジョンについても検討しておくと良いでしょう。
採用市場・競合他社の状況を把握する
採用基準がある程度固まったら、次に採用市場や競合他社の状況を確認しましょう。
採用市場において自社がどのような立ち位置にいるのか、どのようなターゲットから選ばれるのかを把握することで、市場に合わせて採用基準のハードルを下げるなどの調整に役立ちます。
また、会社の規模や給与水準、勤務地などが似通った企業他社を洗い出し、求人媒体で募集しているポジションやターゲットについてリサーチしてみることも効果的です。
競合他社が打ち出している強み・アピールポイントを確認しておき、自社での差別化や魅力の発信方法を検討してみると良いでしょう。
応募者視点に立った求人票を作成する
最後に、設定した採用基準をもとに、応募者視点に立って求人票を作成します。
求人票は、自社にとって最終的な要件定義書でもありますが、エンジニアが応募する際に必ずチェックする情報源でもあります。
そのため採用ターゲットが求める情報や知りたい条件について明記し、最後まで読まれる求人票を作る必要があります。
開発環境・開発体制や、採用ポジションでの業務内容について詳しく記載できると、応募者からも好印象を持たれやすくなるでしょう。
未経験エンジニアを採用する場合の注意点
近年ではエンジニア経験を持った人材の採用難易度が高止まりしていることから、未経験の人材を採用するケースが増加しています。
未経験エンジニアの採用活動を行う際には、採用基準として以下のようなポイントを押さえておくと良いでしょう。
- プログラミングスクールの利用の有無
- IT・技術への関心
- 前職での経験・実績
- 転職回数・理由
- 社会人としてのマナー・モラル
ITエンジニアは採用単価が高く、人材育成にも多大なコストがかかります。
せっかく採用した人物が早期退職を選んでしまえばコストが無駄になってしまうため、エンジニアとしての適性・意欲や転職理由など、自社で長く活躍してくれる人材かどうかを見極めることが重要です。
これまでにプログラミングスクールや学習サイトを使って基礎知識を身につけている場合には、ポートフォリオの提出を求めても良いでしょう。
エンジニアの採用基準を決定後の運用方法
最後に、策定した採用基準を効果的に運用するためのポイントについても解説しましょう。
- 選考での通過基準に落とし込む
- 採用に関わる社員全体で共有する
- 定期的にPDCAサイクルを回す
それぞれ詳しくご紹介します。
選考での通過基準に落とし込む
策定したエンジニアの採用基準は、面接の現場で適切に活用できるよう、合否の判断基準として落とし込むことが大切です。
書類選考・一次面接・最終面接など、それぞれの選考フローにおける通過基準を設定しておき、面接官の主観ではなく客観的な基準に沿って判断できるよう運用するのがポイントです。
通過基準として細かく落とし込んでおくことにより、面接時の質問項目も自然と定まってきます。
たとえば、エンジニアとしての技術を伸ばしたいのか、マネジメント側に回りたいのかといった志向性を考慮したい場合には、入社後のキャリア形成について質問するという手段も考えられます。
採用に関わる社員全体で共有する
作成した採用基準は、採用活動に関わる社員全体で共有しておき、選考中の認識のずれを解消しておくことが重要です。
表面的な採用基準しか共有できていなかった場合には、本来選考を通過させるべき人材を落としてしまう事態にもなりかねません。
そのため採用基準を共有する際には、基準を設けた目的・背景や、各条件の見極め方についても併せて伝えておくことが重要です。
面接における質問例と、それに対する理想的な返答例をセットにして共有するなど、具体的な見極め方も提示するのが望ましいでしょう。
また、求人媒体やエージェントを利用している場合には、それぞれの担当者にも事前に共有しておき、採用活動に無駄が発生しないよう認識を統一しておきましょう。
定期的にPDCAサイクルを回す
採用活動の進捗によっては、作成した採用基準の見直しが必要となることも考えられます。
実際に選考中の判断基準として活用した結果、新たな課題が見つかることも多いでしょう。
そうした問題点を改善しないまま採用活動を続けても、応募者が集まらずミスマッチが起こりやすくなるなどの弊害が発生します。
そのため作成した採用基準は、面接官からのフィードバックや選考の歩留まりなどを参考に、定期的にPDCAを回しながら改善していきましょう。
長期的な視点で採用基準を運用することにより、今後エンジニアの人材獲得競争が激しくなったとしても、精度の高い採用活動を維持することが可能です。
エンジニアの採用基準を明確化してから採用活動を
エンジニア採用において詳細な採用基準を作成しておくことで、入社後のミスマッチを防ぎ、客観的な評価をもとに選考を進められるメリットが得られます。
採用基準に合わせた採用ペルソナを明確化することで、自社の魅力をペルソナに刺さる表現で伝えられることもメリットです。
ただし採用基準の作成に失敗した企業の中には、現場のエンジニアの声を考慮することなく、経営者・人事担当だけで決めてしまう例が多いためご注意ください。
ほかにも企業の理想をそのまま採用基準に反映させたことで応募へのハードルが高くなっているケースや、性格・価値観などのソフトスキルの定義が抜け落ちているケースも見られます。
そうした失敗を防ぐためには、本記事で紹介した5つのステップをもとに採用基準を策定し、定期的にPDCAを回しながら改善していくことが求められます。
担当者同士で認識のずれが発生しないよう、採用活動に関わる社員全体で採用基準を共有しておくことも忘れないようにしてください。
なお、私たち株式会社ダイレクトソーシングでは、ダイレクト採用を中心とした企業の採用活動支援を行っています。
エンジニアを中心としたチームが中核となって、テクノロジーを駆使して採用成果の最大化を図ることを強みとしています。
過去50万件・40種類以上の媒体におけるソーシングデータを活用した戦略立案を提供していますので、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。
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野溝
前職で採用担当・コンテンツディレクターを経験後、株式会社ダイレクトソーシングのWebマーケティング担当に転職。 これまで数多くの採用関連コンテンツに携わり、特にエンジニア、スカウト関連のコンテンツに強みを持つ。