採用マーケティングとは?メリットや手順、用いる手法・サービスを紹介
採用マーケティングとは、自社が求める人材を獲得するために、自社や採用ターゲット層などを分析して、より効率的な採用活動を実現することです。
採用市場における人材獲得競争が激しさを増すなか、より戦略性をもって採用活動を行うために採用マーケティングに注目する企業が増えています。
そこで本記事では、採用マーケティングについて、求められている背景やメリット、具体的な手順と用いる手法、重要ポイントを紹介します。
目次
採用マーケティングとは
採用マーケティングとは、自社が求める人材を獲得するために、自社や採用ターゲット層などを分析して、より効率的な採用活動を実現することです。
主に製品やサービスの売上アップに用いられるマーケティングの考え方を採用活動に用いるため、「採用マーケティング」と呼ばれています。
より分かりやすく表現すると、「求める人材に自社の良さを知ってもらい、入社してもらうための手段」です。
採用ブランディングとの違い
まず採用ブランディングとは、企業理念やビジョン、会社の雰囲気、そこで働く魅力・メリットなどを外部に発信することで、入社先としての自社イメージを高めることです。
その上で、採用マーケティングと採用ブランディングの違いを集約すると、以下の通りです。
これにより、採用マーケティングは即効性のある戦術的なアプローチであり、採用ブランディングは持続的な戦略的アプローチと表すこともできるでしょう。
採用ブランディングについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
参考:採用ブランディングのポイント | 株式会社ダイレクトソーシング (directsourcing-lab.com)
採用マーケティングが求められる背景
採用マーケティングが求められる背景は、主に2つです。
人材獲得競争が激化しているため
労働者人口の減少などを背景に、採用市場において各企業は優秀な人材を獲得するために熾烈な競争を繰り広げています。
こうした状況下では、従来のように大手求人サイトを掲載したり求人広告を出したりするだけでは、他社との差別化が難しく、求める人材を引き付けることができません。
また、求職者側の意識も変化しています。求職者の多くは、単に給与や福利厚生だけでなく、企業文化やワークライフバランス、職場の雰囲気、キャリアパスなど多角的な要素で判断するようになっています。
そのため企業としては、自社の魅力を客観的に理解し、採用ターゲットに分かりやすく伝えることを求められます。
そこで、採用マーケティングが重要な役割を果たすのです。
採用に用いる手法や媒体が多様化しているため
現代の採用市場では、インターネットやデジタル技術の進展などにより、採用手法や媒体が非常に多様化しています。
例えば、従来の求人サイトや求人情報誌などに加えて、SNSやダイレクトリクルーティング(スカウト採用)、人材紹介(人材エージェント)など、さまざまです。
こうした多様化を受けて、企業はターゲットとする層に対して有効にアプローチ可能な手法の選定を求められます。
そこで、採用マーケティングを通じて自社分析や採用ターゲット分析を行い、自社にとって最適な手法や媒体はどれかを明らかにするのです。
なお、「採用マーケティングに用いる手法やサービス媒体」については、後の項目で詳しく紹介します。
採用マーケティングを行うメリット
採用マーケティングを行うメリットは、以下の6つです。
採用における自社の強み・弱みを理解できる
採用マーケティングを実施することで、自社の採用における強みと弱みを客観的かつ詳細に理解できます。
採用マーケティングを進める際には、自社のどの要素が応募者にとって魅力的であり、反対にどの点には改善が必要かを、フレームワークなどを用いて分析します。
これにより明らかとなった自社の強み・弱みは、自社の魅力を最大限に活かしつつ、弱点を補強するための具体的な採用戦略の立案に役立ちます。
自社の採用ターゲットをより明確に理解できる
採用マーケティングを通じて、自社の採用ターゲットをより明確に理解できます。
例えば「どの業界や職種に関心があるか」「採用情報の入手先はどこか」「志望先の選択基準は何か」などについて、自社分析と同様にフレームワークなどを用いて明確にしていきます。
これにより、求人情報や採用メッセージをターゲット層に合わせて最適化し、関心を引きつけやすくなります。
また、ターゲット層に対する理解が深まることで、より適した手法やサービス媒体を選択することも可能となるのです。
適切な採用手法を選択できる
採用における自社の強み・弱みや採用ターゲットの特徴や志向性などについて理解することで、適切な採用手法を選択することが可能となります。
例えば、「新卒など若い層であれば、XやInstagramで社内の雰囲気伝わる画像などを配信」「専門性の高いポジションの募集であれば、ダイレクトリクルーティング」など、自社の採用ターゲットに効率的にアプローチでき、自社の魅力を効果的にアピールできる手法を選択することができるのです。
応募数を増やせる
ここまでのメリットで紹介したように、自社の強み・弱みおよび採用ターゲットについての理解を深め、最適な採用手法を選択すれば、応募数は自然と伸びていきます。
ミスマッチを予防できる
採用マーケティングは、企業と求職者間のミスマッチ予防に対しても有効です。
採用マーケティングを通じて自社の特徴を客観的に把握した上で、正確かつ具体的に発信することで、求職者が自社に適しているかどうかを判断しやすくなります。
例えば、企業の理念やビジョン、大切にしている価値観、職場の雰囲気などを詳細に伝えることで、求職者は自分がその企業で働くイメージを具体的に持つことができます。
これにより、入社後のギャップひいては早期離職を未然に予防できるのです。
採用コストの低減につながる
採用マーケティングを行うことで、採用コストの低減につながります。
例えば、ターゲットを絞った効果的な採用広報を行えば、ムダな採用活動を減らし、より質の高い候補者を効率的に集めることが可能です。
また、先述したようにミスマッチを減らすことで、採用活動や入社後研修、オンボーディングの「やり直し」が発生する頻度を抑えられます。
以上により、手間や時間などを含む採用コストを全体的に削減することができるでしょう。
採用マーケティングの手順5ステップ
採用マーケティングの具体的な手順を5ステップで紹介します。
ここでは、採用マーケティングの全体的な流れを理解しましょう。
自社を分析する
まずは、採用に関する自社分析を行います。
具体的には、以下のような求職者の関心が高い項目を基に、自社の特徴や強み・弱みを分析します。
- 経営理念
- ビジョン
- 大切にしている価値観
- 扱っている製品・サービスの魅力
- 給与・賞与などの待遇面
- 福利厚生
- 人事評価制度
- 有給取得率
- 残業時間
- リモートワークなどの働き方
この際、比較対象として同業他社や採用競合を参考にすると考えやすくなるでしょう。
また、マーケティングで用いられるフレームワークを用いることで、より俯瞰的かつ効率的に自社分析を行えます。
■自社分析に役立つフレームワーク例
- 3C分析
- 4C分析
- SWOT分析
- STP分析
- PEST分析
採用ターゲットを分析してペルソナを設定する
次に、採用ターゲットの詳細な分析を行い、自社が求める人材像をより具体化した「ペルソナ」を設定します。
ペルソナとは、特定のターゲット層を具体的に象徴する架空の人物のことです。
マーケティングにおいてターゲットをより明確にし、販売戦略の方向性や具体的な施策を検討するのに役立てられています。
採用マーケティングにおいても、有効です。
具体的には、自社が求める人材像について以下のような要素を設定してみましょう。
- 年齢
- 居住地
- スキル
- 学歴
- 職歴
- 志望業界
- キャリア志向
- 仕事に関する価値観
- モチベーションの源泉
- 趣味や関心事
- 情報収集に用いる媒体
ペルソナを設定することで、採用ターゲット層のニーズや行動パターン、価値観をより深く理解し、より効果的なアプローチ手法や採用手法を検討および選択できるようになります。
母集団形成から入社に至る流れを明確化する
そして、母集団形成から入社に至るまでのプロセスを明確化しましょう。
採用マーケティングでは、候補者が企業に初めて接触する機会から入社するまでのプロセスを詳細に想定しておき、どのフェイズでどういった施策を講じるのかを具体的に設計していきます。
その際、有効なフレームワークが「採用ファネル」です。
採用ファネルとは、企業が人材を採用する過程を段階的に示したモデルであり、候補者が応募から入社に至るまでの各ステップを視覚的に表現したものです。
具体的には、下記のような段階で構成されます。
■採用ファネル構成
- 認知:企業や求人情報が求職者に認知される段階
- 興味:求職者が企業に興味を持ち、情報を求める段階
- 応募:求職者の企業に対する志望度が一定に達して応募する段階
- 選考:求職者に対して書類選考や面接などを行う段階
- 内定:選考を通過した求職者に対して内定を出して内定フォローを行う段階
- 入社:実際に入社に至る段階
分析結果を踏まえた採用手法を選定する
ここまでの、「自社分析」「採用ターゲット分析」「採用プロセス明確化」を基に、自社に適した採用手法やサービス媒体を選定します。
具体的には以下のような手法やサービス媒体が挙げられます。
- オウンドメディア
- SNS
- 採用イベント
- 採用動画
- 求人サイト
- ダイレクトリクルーティング
- 人材紹介(人材エージェント)
- リファラル採用
各手法やサービス媒体の詳細については、後の別項目で詳しく紹介します。
実行と振り返り
採用プロセスで用いる手法やサービスを具体化したら実行に移し、その効果を定期的に振り返ることが重要です。
実行段階では進捗状況をモニタリングし、データ収集と分析を行います。
必要に応じて戦略を調整し、改善・調整を施しましょう。
なお、こうしたデータの蓄積が次回の採用マーケティングにも役立ちます。
そして採用活動後には、プロセス全体を評価し、成功要因と改善点を明確にします。
こうしたプロセスを通じて継続的な改善を図ることで自社の採用マーケティング力は高まり、自社の採用マーケティング力は向上していくのです。
採用マーケティングに用いる手法やサービス媒体
採用マーケティングに用いる手法やサービス媒体について、主要なものを8つ紹介します。
オウンドメディア
オウンドメディアとは、企業が運営する媒体全般を指します。
具体的には、自社のホームページや採用サイト、商品紹介サイト、ブログなどが該当します。
オウンドメディアは、自社管理のため、自由な情報を掲載できる点がメリットです。
ただし、採用ターゲット層の閲覧を促すためにSEOの取り組みや、SNSなど他媒体からの呼び込みが必要です。
SNS
自社アカウントのSNSを指します。
例えば、X、Facebook、Instagramなどが主要なところです。
企業は各プラットフォームを用いて、自社の求人情報や魅力、職場の雰囲気、具体的な業務内容などが伝わる情報を発信します。
いずれも低コストかつ気軽に活用できるのはメリットですが、炎上リスクには十分に注意しなければなりません。
採用イベント
求職者を対象とした各種イベントのことです。
具体的には、下記のようなものが挙げられます。
- 個別説明会
- 合同企業説明会
- 社内見学ツアー
- 座談会
- 採用関連セミナー
いずれも、自社の理解度と志望度を高める目的で開催され、自社と直接的に接する初めての機会となるケースも多いでしょう。
また昨今は、それぞれをオンラインで行うケースも多く、求職者側は移動の費用や手間がかからない、企業側は準備が比較的容易といったメリットから、頻繁に用いられています。
ただし、情報や雰囲気の伝わりやすさは対面に劣るため、自社の方針によって適宜使い分けましょう。
採用動画
採用動画とは、企業が求職者に向け、自社のPR、自社への理解・興味・応募の促進効果を狙って制作する動画のことです。
視聴してもらえれば、短時間で多くの情報を伝えることができ、印象にも残りやすいため、オウンドメディアやSNSを通じて公開する企業も増えています。
採用動画については、以下の資料でより詳しく紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
参考:【人事向け】採用動画とは?制作効果・活用法やトレンドを解説 | 株式会社ダイレクトソーシング (directsourcing-lab.com)
求人サイト
求人サイトとは、自社の魅力や採用要件を記した求人情報を各企業が掲載して、求職者からの応募を待つスタイルの媒体です。
例えば、マイナビやリクナビが挙げられます。
新卒・中途を問わず、最も一般的な採用媒体といえるでしょう。
一度の掲載で多くの層に対して情報公開できる点はメリットです。
一方で、掲載時点で料金が発生するため仮に応募が無くても費用がかかる点や、利用企業が多いため大手や競合に埋もれがちな点はデメリットといえます。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、企業が求職者へ直接アプローチする採用手法のことです。
スカウト採用とも呼ばれます。
自社が良いと思った人材に対して企業側から確実にアプローチをかけられるため、人材獲得競争が激化している昨今、特に注目されています。
一方で、スカウトメールの作成や候補者との個別やり取りなど工数が多い点は、留意しましょう。
こちらの記事では、具体的なダイレクトリクルーティングをまとめて紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
参考:ダイレクトリクルーティングとは?30サービスを徹底比較(中途採用向け) | 株式会社ダイレクトソーシング (directsourcing-lab.com)
人材紹介(人材エージェント)
人材紹介とは、自社の希望条件を満たす人材をエージェント経由で紹介してもらえるサービスです。
基本的に成功報酬型のため費用の掛け捨てはない点や、条件を伝えるだけで紹介を受けられる点は魅力ですが、採用単価は他の手法と比べると高くなりやすいのが難点です。
リファラル採用
リファラル採用とは、自社の社員から知人を紹介してもらう採用手法です。
制度にして、紹介者へインセンティブを支払うケースも見られます。
自社の社員による推薦のため一定のマッチ度が担保される点や、採用コストを抑えられる点はメリットです。
ただし、紹介者と候補者の関係性への配慮が求められる点や早期に採用したい際には不向きな点はデメリットといえるでしょう。
採用マーケティングで成果を得るためのポイント
採用マーケティングで成果を得るためのポイントを、3つ紹介します。
毎回の採用活動で得られるデータを蓄積していく
自社の採用活動を通じて得られるデータは貴重です。
集まった母集団の数、そこからの応募数、面接通過率、内定率、そして最終的な入社人数など、各プロセスでのデータを記録し、蓄積するようにしましょう。
これにより、採用マーケティングの精度は徐々に高まっていき、より効果的な採用戦略や具体的な施策を立案できるようになります。
現行の採用手法や媒体にこだわり過ぎない
忙しいなかで採用活動を行うとなると、仮に課題感を感じていても再検討や変更の手間を惜しみ、既存のものを使いがちです。
ただ、刻々と変化する採用市場や求職者のニーズに対応するためには、現行の採用手法や媒体にこだわり過ぎず、新しい手法や媒体を積極的に試すことも重要です。
採用目標を達成しにくくなった、以前よりも採用に苦労しているといった場合は、一度採用手法や媒体を見直してみてはいかがでしょうか。
社内連携に注力する
採用マーケティングを成功に導くためには、採用担当者だけでなく社内全体での連携が不可欠です。
例えば、「自社分析」や「採用ターゲットの明確化」を行う際には、社内へのヒアリングやアンケートが有効です。
また、採用マーケティングによって完成した採用プロセスを実行する際にも、他部署の協力が欠かせません。
こういった連携を怠ると、ミスマッチや早期離職を引き起こしやすくなってしまうため、特に重視すべきポイントといえるでしょう。
まとめ
採用マーケティングとは、自社が求める人材を獲得するために、自社や採用ターゲット層などを分析して、より効率的な採用活動を実現することです。
人材獲得競争の激化や、採用に用いる手法や媒体の多様化を背景に注目されています。
採用マーケティングを行うことで、「自社の強み・弱み」や「採用ターゲット」を明確化でき、結果として「応募数増加」「ミスマッチ防止」「採用コスト削減」を期待できます。
採用マーケティングを行う5ステップの手順と、用いる手法やサービス媒体をそれぞれ紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
ただし、採用マーケティングで成果を得るためには、「採用活動で得られるデータの蓄積」「現行の採用手法や媒体の見直し」「社内連携への注力」が重要な点は留意しておきましょう。
また、弊社はダイレクトリクルーティング支援企業として、過去70万件・全40媒体以上のソーシングデータを用いて、自社が求める人材の採用を最短ルートで成功に導くサポートを行っています。
自社にとって最短・最良の採用手段を知りたい方は、ぜひ以下の「問い合わせフォーム:無料」から気軽にお問い合わせください。
45分の気軽な相談会を
開催しています
竹村 朋晃
株式会社ダイレクトソーシング CEO (プロフィールはこちらをクリック) 2005年に野村総合研究所に入社。損害保険システムの構築に従事。2015年11月より株式会社ダイレクトソーシングを立ち上げ。エンジニア経験者中心にデータドリブンリクルーティングを中心としたサービスを展開。
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